ようこそ筑波大学生物学類へ

 
 21世紀は生物学の時代とも言われます。我々の前に山積している環境問題や医療の問題、エネルギー問題などの解決に対して生物学に期待されるところが大きくなっています。しかし、その一方で、個別の問題に解決法を見いだしていく対症療法的な解決が限界に近づいているとも考えられています。
 生物学は、我々の体を構成する分子から個体、個体を取り巻く環境へと階層的に構成される学問です。そして、どの階層においても、個別の要素を全体的なシステムの中で捉えようとする学問です。それは、おそらく生物学が根源的に問う「生きているとは、どういうことか」という問題に対して、要素還元的な志向からは、答えられないからではないでしょうか。我々が「生物」に対峙したときに感じる独特の感覚、その背景にあるものを問い、生きていることを理解しようとすると、きっと新しい視野が開けてくるでしょう。 地球の46億年の歴史のなかで、生命の誕生までには10億年程度しか要しませんでした。生命誕生後の時間の方が長いのです。それにもかかわらず、その後別の生命が誕生し、我々を凌駕するなどということは起こっていません。なぜでしょう?そんなこと、考えてみたくなりませんか?
 我々の直面する環境問題などは、早急に手を打つ必要があるかもしれません。でも、少し踏みとどまって、「生きている」ことを一度熟慮した人材の方が、より正しい解決に導けるのではないか。われわれ生物学類の教員は、そんな思いで生物学と向き合っています。
 われわれ生物学類の教職員そして在学生一同は、皆さんの入学を心からお待ちしています。

 生物学類長 和田 洋