国際交流


 マンチェスターだより   【派遣留学生からのメッセージ】

 2007年9月〜2008年6月派遣留学生

 ・小濱 千裕

 ・近藤 小雪


生物学類3年 小濱 千裕

 留学生活が始まって6ヶ月が経ち、驚きと発見が尽きない毎日であるが、私は留学最大の目的であるマンチェスター大学における研究生活について書きたいと思う。
 
 私の研究室は現在スーパーバイザー、スタッフ、ポスドク、院生の人々からなる6人の研究室である。「酵母を使った酸化ストレスに対する分子的細胞内応答の解析」というテーマのもと、各々がタンパク質合成や遺伝子発現制御など異なった観点から研究している。私はまずスーパーバイザーから与えてもらった自分のプロジェクトに関連する論文を読み背景や基礎知識を身につけた。その後実験を開始し、その結果をもとにスーパーバイザーと話し合い次の実験計画を立てるという手法をとっている。専用の実験スペースが与えられ実験設備も整っている。別の部屋にはライティングデスクがあり、パソコンで論文を読んだり書くことができる。実験操作の指導は基本的に私の研究内容に近い分野の院生の学生が付き添って教えてくれている。実験内容によっては他の研究室の仲間に教えてもらうことも多い。
 
 ラボミーティングは週に1回あり、メンバーが1週間の実験結果をスライドに映しながら発表し討論する。私も実験が始まると、このミーティングに加わり発表しているが、実践的な生物学の英語を使える練習の場となっている。他には別の3つの研究室と合同のミーティングや専攻によるセミナーも週1で行われており、英語のプレゼンを学びまた知識を増やすためのいい機会が多くある。
 
 私の研究室の人々はみな気さくでフレンドリーである。スーパーバイザーはとても丁寧に研究の進め方を教えてくれ的確な指針を与えてくれる。他の人々も実験手法に対するいろいろなアドバイスをくれたり、相談に乗ってくれる。研究の合間にはランチを時々外に食べに行ったり、ティータイムに談話したりと、研究以外にもいい人間関係が築かれている。またクリスマスの時期には他の研究室と合同の食事会があり、クリスマスの雰囲気を楽しみつつ様々な研究者と接することができた。
 
 最初は英語に自信があった訳ではないため、語学と初めての研究室という二重の不安があった。しかしここには自由に自分の研究に取り組める十分な環境が与えられ、またそれを支えてくれる人々がいる。前向きに積極的に取り組む姿勢があれば、いろんなことが無限に実現可能であり、またその努力はいろんな自信を生み出すと思った。
 
 研究のみならず、多くの新しい異文化の人々との出会い、初めて感じる環境や文化、ここでの生活の経験から日本では決して見つけることができなかった新しい価値観と視野の広さを得ることができたと強く実感している。大学生のうちに海外留学ができる経験、これは現実を体全体で感じ広い知見を与えてくれ、今後自分を成長させてくれる大きな精神的財産になると思う。


生物学類4年 近藤 小雪

 このマンチェスターだよりを書くにあたって、これまでの私の留学生生活を、生活がスタートした8月から思い返してみました。イギリスに着いてからの始めの一ヶ月間は初めての異国での生活に、何もかもが珍しく、新鮮に感じ毎日が発見と驚きの連続でありました。しかし約五ヶ月がたった今は、ほとんどこちらでの生活にも順応し、落ち着いた日々を過ごしています。

 現在の私の生活の中心はもちろん研究室です。それなので、ここでは私の研究室生活について主に書きたいと思います。
 
 私は留学するのが四年生の8月ということで、3月から7月中旬まで筑波の古久保-徳永先生の研究室に所属していました。こちらでの研究室は古久保-徳永先生の紹介で同じようにショウジョウバエを扱っている研究室に入ることができたので、とてもラッキーだったと言えると思います。過去の先輩方の記事にもあるように、希望の研究室に所属できないということがしばしば起こるようですが、私はこのように第一希望の研究室に入ることができました。
 
 これまでは私の面倒は研究室のボス(supervisor)が見てくれていました。研究室全体では「short stop (shot)」という遺伝子に注目してそれぞれが実験を進めており、私はそのshotと他の遺伝子との相互関係を調べるというテーマで現在実験を行っています。私のsupervisorは「自分で考えて自立して実験を行う」ということをとても重視していて、実験スケジュールの組み立てなどは私個人に任されています。大きな実験のまとまりごとに説明をしてくれて、後は自分でどのようにそれらの実験をこなしていくか考え、分からない部分があったら質問をしに行く、というような感じです。もちろん一回の説明では理解できない部分や実験の途中で分からないことが生じるので、私はよく質問に行きます。行くのですが、自分から質問に行かないと後は放置されてしまいます。これは日本でも同じだと思うのですが、やはり待っているだけでは周りの人は手を貸してくれません。私のsupervisorはいつもとても忙しそうで話しかけるのを躊躇してしまうことも多いのですが、分からないことがあったら積極的に聞きに行く姿勢がとても大切であると学びました。supervisorも「質問をすることはとてもいいことだよ」と言ってくれました。
 
 でもこれは簡単ではありません。英語力と自分の知識の不足から、何度か質問をしても理解できないことがしばしばあります。私にとって、研究室生活は実験をすることよりも何よりも、周りの人とコミュニケーションをとることが一番大変です。
 
 また、毎週金曜日の午前中はラボミーティングがあり、自分の実験結果を報告しあいます。私の研究室はメンバーのほとんどがポスドクということもあり、ラボミーティングは毎回白熱した議論が交わされます。みんながお互いの研究について臆することなくずばずばと質問し、みんなで疑問点について考えます。ここでも英語力と知識の不足から、私はまだまだ議論についていけず、悔しい思いをしています。このラボミーティングで議論の輪に入れるようになるのが現在の私の目標と言えるかもしれません。
 
 ここまで、研究室生活について書いてきましたが、最後に「四年生で留学する」ということについて少し触れて、終わりにしたいと思います。 この留学プログラムでは三年生で留学する人が多いと思います。なぜ私が四年生で行くことにしたのかというと、教職科目をとっていたからです。教職科目をとっていると、三年生で留学し、四年で卒業するというのは現在のところ無理なようです。私は留学前の五月に教育実習を終えてからこちらに来ました。その頃は書類を提出したり、研究室決定についてマンチェスター大学側の担当者と連絡を取ったりしなければならず、両立は簡単ではありませんでした。でも私は四年生で留学してよかったなと感じています。
 
 留学前に筑波の研究室で少しでも研究分野の知識と実験技術を身につけられたことは、こちらに来てからとても役立ちました。
 
 卒業に関しては私は五年で卒業になってしまいますが、帰国後に卒業し、9月から大学院進学という道もあるようです。こちらに来てから将来についていろいろ考えることも多く、学類卒業までもう一年間増えることは、私にとってプラスになっていると感じます。それなので、四年生で留学することについて迷っている人がいたらぜひチャレンジしてもらいたいと思います。
 
 私の留学生活は楽しいことばかりではありません。もちろん楽しいこともたくさんありますが、同じように苦しいこと、つらいこともあります。五ヶ月が経った今でも、英語が思ったほど上達せず、伝えたいことが伝えられず悔しい思いをすることもたびたびあります。それでも、誰にとっても留学生生活で無駄な一年というのはないと思います。チャレンジする価値があり、きっと世界が広がると思います。

 最後になりましたが、このマンチェスター便りが少しでも留学に興味のある人の役に立てたら幸いです。最後まで読んでくださりありがとうございました。