国際交流


 マンチェスターだより   【派遣留学生からのメッセージ】

 2008年9月〜2009年6月派遣留学生

 ・白戸 秀

 ・堀本 なな子


生物学類3年 白戸 秀

2008年8月から交換留学生としてイギリスマンチェスターでの生活が始まりました。

到着直後のマンチェスターは、猛暑の日本とは比べ物にならないほど涼しく、快適だったことが思い出されます。最高気温はおおよそ20度、一日のうちにめまぐるしく変わる天気と遅くまで沈まない太陽に驚きあきれたものです。

●語学学校について
8月は語学学校で過ごしたわけですが、クラスは、サウジアラビア人、イラン人、トルコ人と、多国籍な構成で、ただそれだけで驚いたりもしたものです。彼らの、母語を前面に押し出した英語は、自信をもってしゃべろうとすることが大事なんだと気付かせてくれました。

イギリスの語学学校なんだから、すばらしい教育効果が上がる工夫があるんだろうな、というような淡い期待をしていたのですが、やはりそのようなものはなく、受験で扱うような文法知識をおさらいするよう印象でした。とはいうものの、クラスはテキストから脱線し、各国訛りな英語でのおしゃべりの場になることも多く、そうなってくると、ついていくのが大変でした。簡単な文法問題で悩んでいるクラスメートが、話し始めると止まらないのが、不思議でした。

●ラボについて
5週間の語学コースが終了すると、いよいよ、ラボでの活動が始まりました。ラボに所属するのが初めてな上に、英語にも不安があるという、二重の不安を抱えてのスタートだったのですが、親切なメンバーの、粘り強い説明のおかげで、なんとかスタートを切ることができました。当初は、意思疎通がうまくはかれず、実験で間違うような事件も発生したのですが、だんだんにそのような件数も少なくなっていったので、少しは英語にも慣れてきたのだろうと思いました。

所属するラボは、僕も含め、学生4人中3人が留学生という国際的なラボです。イギリス人の英語を他の留学生が僕にもわかるような英語に「翻訳」してくれるような場面もあり、助かります。ボスやメンバーと実験内容について丁々発止のやり取りをする他の留学生のメンバーをみると、ただ、すごい、と思うばかりです。僕は日本語でもそんなにしゃべれない、というような感想を抱いてしまいます。

実験は、3種類を並行して行っています。一つ目は、タバコを用いて、葉緑体、ミトコンドリア、核との間の遺伝子のやりとりを見るというものです。やりとりが起こる頻度が小さいために、大量のタバコの葉を用いて行いました。以前のマンチェスターへの留学生が、留学について「目をつむって眠るのも惜しいくらい充実していた」と言っていたのですが、僕の場合は「目をつむって眠ると、タバコの葉が瞼に浮かぶ」ような状態でした。2つ目、3つ目は葉緑体における脂肪酸合成に関して、それぞれ、アブラナ、ブラックグラスを用い、農薬や抗生物質に対する耐性を確かめるような実験です。

ラボのある建物は新しい建物です。最大の特徴は、その開放感です。4階建ての建物は1階から4階まで吹き抜けになっています。つまり、4階から1階の様子が見下ろせるわけです。机に置いてあるリンゴが転がって4階から1階まで落ちてしまうようなことはないのか心配になってしまいます。また、それぞれの階も、ボスは個人の部屋をもっているものの、ラボのメンバーはいくつかの他のラボのメンバーと大きなエリアを共有するように形成されているライティングゾーンを利用しています。そのため他のラボのメンバーとの交流も盛んという感じです。そして、もうひとつの特徴が、すべての実験室とライティングゾーンが回廊によって完全に分離されているということです。さまざまな薬品を用いる実験室と、食事などをすることもあるライティングエリアを遮断する上で、この構造は効果的であると感じます。

●今後の予定
留学期間も残すところ半分となっていますが、イギリスでの生活のまとめということで、これから、加速度的にすべきことが増えていくような気がします。実験はまとめに入らなければならないわけですし、英語力に関しても、まだまだ努力しなければいけないと思います。実際、半年経った今でもリスニング力には不安があります。
また、留学は自分にとって、大学生活における一つの大きな目的であったわけですが、この経験を、将来に向けた何らかの手段として利用していけるよう考えていこうと思います。


生物学類4年 堀本 なな子

●寮生活について
ほとんど白戸君が書いてくれているので、私は寮での生活について書こうと思います。私はイギリス人7人、香港からの留学生1人と1つのフラットをシェアしています。大きな家で台所とシャワー、トイレを共有して住んでいるというのと似ていると思います。フラットメイトとの生活は日本人の私にとって驚くことがいっぱいでした。1番はじめに驚いたことは、ほとんどのフラットメイトが毎週(毎晩!?)クラブに出かけることです。イギリスの学生にとってクラブは特別な場所ではなく、食事に行くのと同じように、気軽に遊びにいくところのようです。次に驚いたのはイギリス人学部生の台所の使い方です。全員ではありませんが、何人かのフラットメイトは料理をした後、食器やお鍋などを数週間、数か月洗わずに放置します。他のフラットメイトに聞いてみたところ、どのフラットのキッチンにも洗っていない食器が放置されているようです。2年前にマンチェスターに留学していた先輩が「イギリス人学生の台所の使い方があまりにも汚くてケンカをした」と言っていましたが、本当に汚いです。週1、2回の掃除後、1日きれいな状態が保たれていると、フラットメイトと「こんなにきれいなんてみんなどうしたんだろうね?」と話すくらいです。また、シャワー室から部屋までバスタオルを巻いただけで移動するフラットメイトを見た時も驚きました。私のフラットは他のフラットへの通り道になっているので、男子学生とも掃除のおじさんとも出くわす可能性があります。それにも関らず、果敢にバスタオル1枚で歩きまわるフラットメイトたちには本当に言葉もありません。すごいです。

こんなフラットメイトたちとフラットをシェアするのには悪いところも、良いところもあります。たまにチョコレートで壁に落書きしてみたり、豆を床にばらまいてみたり、卵を投げて遊んでみたりするフラットメイトに悩まされることもありますが、寮に住んでよかったことは、やっぱり友達ができることです。はじめはイギリス人同士の会話についていけず、不安になったりもしましたが、台所でたまたまあったときに言葉をかわすうちに少しずつ仲良くなりました。テスト期間中にも関らず毎晩パーティーを開き、禁止されている煙草を台所で吸うフラットメイトに我慢できず、友達と一緒に寮の責任者に報告してなんとか問題を解決したことも、今思えばいい経験です。

●最後に
もし今読んでいる人がマンチェスターへの留学を迷っているのであれば、あまり迷わずに行ってみたらいいと思います。私は金銭的なことや4年次で留学することに少し迷ったこともありましたが、今は本当に来てよかったと感じています。幸運なことにこの留学ではイギリスの大学の研究室に学部生のあいだに1年も所属することができます。イギリスでは学部生は3か月ほどしか研究を行なわないので、研究室にはポスドクとPhDの生徒しかいません。まだ何にもわからない学部生という扱いなので、ためらわずに何から何まで質問できます。イギリスの大学院生やポスドクの方々の話を聞けたことは、この留学において最大の財産になったと思います。さらに、世界中から来た色々な考えをもったひと、様々な経験をしたひとにであうことで、自分が将来何をしたいのかをもう一度ゆっくりと考える機会になりました。

人によって経験することは違いますし、苦しいこともあるかもしれません。ですが、やってみなければ、何が起きるかわかりません。ただ、どんな目的をもっていたとしても、生物学類の生徒にとって、この留学が無駄になることは絶対にないと思います。