ゾウリムシの突然変異体を用いた遺伝子 クローニングの試み

        山田 利行     指導教官 高橋 三保 子

【導入】ゾウリムシは繊毛虫門に属する高等な単細胞生物です 。そして、単細胞生物であるがために、自然環境での生存, 種の存続のための基本的な 役割を果たす分裂, 分泌, 摂食, 排泄, 運動, 性行動, シグナル伝達などに関わる機構を細胞内に全て持 っています。また、ゾウリムシは分子生物学的, 電気生理学的手法を用いた実験の材料 としてよく使われており、これはゾウリムシの試験管での培養法が確立されているこ と, 突然変異体が誘導しやすいことによります。

【目的】ゾウリムシ Paramecium caudatum, P. tetraurelia では多くの回避行動突然変異体が知られています。野生型のゾウリ ムシは、障害物に遭遇した際、1秒以内の後方への遊泳を行い、その後再び前方への遊泳 を行うことにより障害物を回避していますが、回避行動突然変異体は障害物に遭遇を しても後方への遊泳が行えません。回避行動の際、野生型では膜が興奮、すなわちCa2+ 活動電位の発生が見られますが、突然変異体では見られず、突然変 異体の欠陥はCa2+チャネルの機能不全にあると考えられています。また、野 生型の大核核質をこれらの突然変異体の大核へ注射すると突然変異体の表現型が野生 型へ回復することが知られています。このことを応用して、Haynesらは(1998 P. tetraurelia の回避行動突然変異体である pwA において、遺伝子のクローニングに成功しました。そして、遺伝子産物とCa2+チャネルの機能に関係に ついては現在も研究が進められています。私は、この方法を用いてP. caudatum の回避行動突然変異体である cn rA, cnrB における原因遺伝子の同定を 試みました。

【方法】野生型の全DNA 4つの制限酵素 HindIII, XbaI, BglII, Bcl で切断し突然変異体の大核に注射します。その結果 、最も形質の回復を促した切断 DNA をアガロースゲル電気泳動で4つの画分に分け、それぞ れの画分を再び注射します。こうして得られる切断DNA 断片を pBlue-scriptII ks(-) に入 れ、クローニングします。このライブラリーから目的の遺伝子を注射によりスクリー ニングします。

【結果】現在までに、CNR の形質が野生型のクロマチンの注射によ り回復をすることを確認することができました。現在、クローニングに有効な制限酵 素を検討中です。


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