タバコ・ペクチン−グルクロン酸転移酵素遺伝子の機能解析

970870 正岡 伸崇  指導教官 佐藤 忍

 「背景・目的」

細胞同士が強く接着することは、胚や芽の形成を初めとする多細胞植物の形態

形成現象に必須であり、また時に応じてその接着性を弱めることも、葉肉組織

の形成や器官脱離などの種々の発生現象に必須である。この細胞間の接着性の

制御機構を明らかにすることは、植物の多細胞システム構築のメカニズムを理

解する上で極めて重要である。半数体タバコNicotiana plumbaginifoliaの葉切片に、T-DNAを導入することによって得られた、器官分化能力を喪失し細胞接着性が弱い細胞株、nolac18ではペクチン画分のグルクロン酸量が1/8になっており、細胞壁中の架橋構造に変化が生じていた。その変異の原因遺伝子は、ペクチンーグルクロン酸転移酵素遺伝子、NpPGUT(Pectin Glucuronyl transferase)で有ることが最近明らかになった。本研究ではNpPGUTmRNAと相補的な配列をもったアンチセンスRNAを細胞内で発現する形質転換体を作成し、PGUTの機能解析を行う事を目的としている。

 

「実験方法」

Nicotiana plumbaginifolia及びNicotiana tabacum葉切片に、35SプロモーターによりNpPGUTのアンチセンスRNAを発現させるように構築したベクターpBI121を、アグロバクテリウムを介して導入し、カナマイシン(0.1mg/ml)とクラフォラン(0.5mg/ml)を含む、MS培地で形質転換体を選別し、形質転換体の形態観察を行った。

 

「結果」

N.plumbaginifoliaより二個体、N.tabacumより数個体の形質転換株を得た。

N.plumbaginifoliaより得られた個体からは、不定芽が形成されなかった。一方N.tabacumからは不定芽が得られたが、形態的な異常は今のところ確認できていない。今後、光学顕微鏡による観察、およびノーザン法によりNpPGUTの転写量の減少レベルを確認する予定である。