ツバメのコロニー営巣と単独営巣における

繁殖スケジュールと古巣利用の違いについて

発表者: 朝倉 純子 指導教官: 藤井 宏一

[はじめに] ツバメ(Hirundo rustica)の本来の営巣形態は、コロニー性であるといわれている。現在では、人家の軒先に分散して営巣するという適応をしている。筑波大学構内では、1517年前からツバメの営巣が確認され、10年前に単独繁殖が12巣あったことが報告されている。2001年3月ツバメが渡来する前に、前年までの古巣を調査したところ、約50巣が集中しているコロニーを発見した。そこで、分散繁殖するように適応してきたツバメが、なぜコロニー繁殖を発達させてきたのか調べた。

[調査]  2001年の繁殖期(3月下旬から8月下旬)の間、筑波大学構内でコロニー営巣、単独営巣しているすべてのツバメの繁殖生活を観察した。毎日日中に親の行動や雛の成長を観察し、日没後の就寝時に、個体数と繁殖に使われている巣の数を記録した。そして、繁殖結果や繁殖スケジュールについて、コロニー繁殖と単独繁殖で比較をした。

[結果と考察] コロニー繁殖と単独繁殖の間で、一腹卵数、繁殖成功度(産卵数に対する巣立ち雛数の割合)ともに差はなかった。しかし、繁殖地への渡来は単独営巣の場所よりコロニーで早く、また早く渡来した個体ほど、古巣を再利用する傾向があった。早く渡来し、古巣を再利用することは時間やエネルギーの節約になり、二回繁殖できるなど有利であると考えられる。コロニーでは古巣の再利用率が他の単独営巣場所より高かった。古巣を再利用した番と、新しく巣を作った番で、一腹卵数や繁殖成功度に差がなかったことから、古巣を再利用することによる弊害はないと考えられる。コロニーは、梁が格子状に張り巡らされた構造になっており、一夫婦が一つの格子内にある複数の古巣を別荘として利用していた。別荘は、二回目の繁殖で使われるだけでなく、子育てをしている巣の監視台や、雛で巣がいっぱいになった時の親の寝床になった。このような特有の生活様式は、ツバメ達自身が発達させてきたものであり、それに伴い、コロニーが発達してきたと考えられる。筑波大学内では、単独営巣数が減少し、コロニー営巣数が増加するという傾向が、これからも続くであろう。