多機能蛋白質ペプチド伸長因子-1αの性状解析


安藤 邦恵   沼田 治

導入・目的
タンパク質は、生体内で様々な機能をしている。通常、1つのタンパクは、1種類のみの機能を持つといわれてきた。しかし、近年、複数の異なった働きをもつ蛋白質、多機能タンパクが発見されている。ペプチド伸長因子-1α(Elongation Factor‐1α、以後EF‐1α)は、分子量49kDaで、それらの多機能蛋白質の1つであり、真核生物では広く保存されている。遺伝子の翻訳時に、GTP依存的にアミノアシルtRNAをリボソームへと運び、新しく作られる蛋白質のペプチドの伸長をする、タンパク合成に不可欠なタンパク質である。しかしながら、ペプチド伸長因子としての役割とは別に、EF-1αは、アクチンや、微小管などの細胞骨格タンパクと反応することがわかっている。繊毛虫Tetrahymena pyriformisを使った研究でF-actinは、0〜80mM KClで、EF-1αは1:1の割合でF-actinに結合し、アクチン繊維を形成して束ねるということが倉沢らによって明らかにされている。この結果より、EF-1αがダイマーを形成してF-actinを束化するという分子モデルが立てられた。しかしながら、このモデルを立証するような論文は未だ出ておらず、Condeel at el.らは、それを否定している。今回私は、このモデルを裏付けるために、EF-1αがF-actinを束化するような条件で、モノマーで存在しているのか、あるいはダイマーで存在しているのかを、ゲルろ過カラム法でsuperdex200を用いて調べた。溶出パターンと分子量との相関グラフを求めるために、Calibration Kit for Gel Filtration Column(Amersham Pharmacia)を用いた。

方法
Calibration Kitの7種類の蛋白質を、MES Buffer(pH 6.9, 80mM KCl, 5% glycerol, 10mM MES, 0.75mM 2-Me, 2mM MgCl2, 0.01mM TLCK, 5μg/ml leupeptin, 0.2mM PMSF)に溶解し、予め同じバッファーで平衡化しておいたSuperdex200に流し、溶出パターンを調べた。蛋白質の分子量と、各々の蛋白質の溶出パターンから求められたKav(Kav=Ve-Vo/Vt-Vo)値から、検量線を作成した(Fig.1)。
武田らの方法に従いEF-1αを精製した。得られたEF-1αは、実験1と同じ条件にするために直ちにMES Bufferにて透析された。透析したEF-1αを、予めMES Bufferで平衡化されたSuperdex200に流し、UVの吸光度のピークを確認した。EF-1αが溶出するまでに必要なBufferの量(Ve)を求め、実験1で得られたグラフと対応させた。

結果・考察
実験1より求められたグラフを図1に示す。実験2より得られた吸光度のピークは2つあった。図2に示す。グラフより、1つ目のピークは、分子量100kDa前後、2つ目のピークは、50kDa前後だということが分かった。これらのフラクションを電気泳動したところ、どちらのピークもEF-1αであることが分かった。これより、EF-1αは、F-actinを束化するような条件ではダイマーで存在しているということが示唆された。