含窒素化合物分解微生物のスクリーニング

木下 悟(980779)
指導教官:小林達彦

【目的】

 アジドは一般的に毒性、爆発性を有する化合物である。これまで、アジド化合物を資化し生育する生物は自然界全体を見ても全く報告がなされていない。アジド代謝活性を有する生物の探索は新規な領域を開拓するという点からも非常に意義深いと言える。そこで、本研究では土壌よりアジド資化性微生物を単離し、その同定を行うことを目的とした。

【方法】

1.土壌からの微生物の単離
 20か所より採取した土壌サンプルをアジド化合物を単一窒素源とする液体培地10mlに懸濁し、28℃で振盪培養を行った。1週間後に培養液を同組成の液体培地に1%植菌し再び振盪培養を行った。これを3週間にわたって行った後、同組成の寒天平板培地に画線し、アジド資化性微生物を単離した。

2.アジド代謝活性の測定
 栄養培地で28℃、24時間前培養、本培養を行い、遠心により集菌し10mM KPB(pH7.5)で2回菌体洗浄後、100mM KPB(pH7.5)に懸濁し、細胞懸濁液を調製した。
 また、2mMの基質溶液を調製し、細胞懸濁液500μlと基質溶液500μlを混和し、28℃で24時間反応させた。反応後の溶液を、ODSカラムを接続したHPLCを用いて分析した。

3.微生物の同定
 アジド代謝活性が特に高かった菌株を選抜し、生育条件、光学顕微鏡観察及びグラム染色、コロニー形態観察、芽胞の有無、運動性、オキシダーゼ、カタラーゼ、発酵性テスト、ブドウ糖からの酸及びガス産生能等の試験を行い、属の推定を行った。
 現在、種を同定するために、各種酵素活性の有無、各種化合物の資化性等に関する試験を行うとともに16S rDNAのシークエンスを行っている。

【結果と考察】

 2種類のアジド基質について、計30種の菌株を単離した。アジド分解活性が特に高かった1株について属の推定を行い、Pseudomonas groupに属する細菌であることが判明した。現在、行っているさらなる生化学的解析の結果や16S rDNAの塩基配列の結果をも併せて鑑みることによって、Pseudomonas属の最終的な種の同定を行いたい。
 本研究により発見された細菌はアジド代謝に関与する酵素を持っているものと推定される。現在までにアジドを主要な基質とする酵素の報告はなされておらず、本菌株から酵素の精製、酵素遺伝子の取得を行い、酵素の諸性質を解明することが今後の課題である。