枯草菌ファージ由来 DNA ポリメラーゼの大量発現と精製

甲田 秀和     指導教官:小林 達彦

    

目的

枯草菌ファージ M2 の直鎖状 2 本鎖ゲノム DNA は両 5’末端から複製が開始され、 19 kbp の長さの DNA が途切れることなく合成される。これは、プライマーとして機能するプライマープロテインを用いるプロテインプライミング DNA 複製、 DNA ポリメラーゼの高い安定性、高い比活性・プロセッシビティ、精密な校正機能によって可能になると考えられている。本研究では、 M2 DNA ポリメラーゼに特異的なこのような諸性質の解明を行うことを目的として、まず本酵素の発現ベクターの構築、大腸菌を用いた大量発現条件の検討、本酵素の精製を行った。

 

方法

まず、 M2 DNA ポリメラーゼ遺伝子部分を PCR で増幅し、 T7 プロモーター発現ベクターおよび lac プロモーター発現ベクターにそれぞれ挿入した。次に、構築した発現ベクターに対して、宿主大腸菌、培養温度、誘導温度の各種条件検討を行った。続いて、各種カラムを用いて本組換え酵素タンパク質の精製条件の検討を行い、精製を行った。

 

結果および考察

種々の検討の結果、 pET システムを用いた発現系が本酵素タンパク質の生産に最も適していることが判明し、 IPTG 濃度を 1mM に投与することによって、最終的に全可溶性タンパク質の 30 パーセント程度の発現産物を得ることができた。精製条件については、まず、集菌した菌体を超音波破砕し、可溶性画分を得た。続いて、 DEAE-Sephacel などのイオン交換樹脂や Heparin などのカラム操作を行うことによって、 SDS-PAGE 上で単一バンドになるまで精製することができた。今後、放射性同位元素 32P を用いて活性測定を行う予定であり、 M2 DNA ポリメラーゼの諸性質の解明が期待される。