根粒菌の有用遺伝子の大腸菌での発現

指導教官:神戸 敏明       980794  諏訪 純平

 

【導入】近年様々な生物において遺伝情報の解読が進んでいるが、本研究で用いたミヤコグサ根粒菌(Mesorhizobium loti MAFF303099株)の全遺伝情報も(財)かずさDNA研究所により解読されインターネット上にデータベースとして公開されている(http://www.kazusa.or.jp/rhizobase/)。

 本研究ではそのデータベースを用い、ラクトン分解酵素とアミノ酸レベルで相同性検索を行ったところ、高い相同性が見られる遺伝情報を発見した。そこで、異種のラクトン分解酵素として、また、新規な機能を持った酵素である可能性を期待し、本遺伝子の検討を試みた。これにより、ラクトン分解酵素の機能が明らかとなり、さらには、最近のトピックスとして挙げられる微生物の定数感知機構に対する理解も深められるものと思われる。

 微生物の定数感知機構とは、微生物が生物発光、宿主への寄生などの様々な行動を行う際には同種の微生物同士が集まり合う必要があり、その集合のシグナルとして一種のラクトン化合物が関与する機構である。ラクトン分解酵素を作用させることによりそのシグナルとなるラクトン化合物を無効にし、例えば人間や農作物に寄生する有害な微生物の感染を阻止したりすることも可能になると思われる。

 

【方法】まずM. lotiの遺伝情報を担う染色体と二つのプラスミドのうち、既知のラクトン分解酵素遺伝子と相同性を示した目的遺伝子が存在する染色体DNAを抽出し、これを鋳型として目的遺伝子に対して設計したプライマーを用いてPCR反応を行い、目的遺伝子部分の増幅を行った。

 こうして増幅した断片をpUC19につなぎ、目的遺伝子が導入された発現プラスミドを構築した。そして宿主大腸菌、誘導物質濃度、培養温度などを様々に変えた条件検討を行い、目的タンパク質の発現を試みた。

 

【結果】構築した発現プラスミドは2YT/Amp培地、37℃、誘導物質としてIPTG濃度1mMの条件で12時間培養後、SDS-PAGEにより目的タンパク質の発現を検討したところ、目的の分子量の位置に顕著に誘導されるバンドが確認されたために発現は起こっていることが明らかとなった。

 しかし、菌体を超音波破砕して可溶性画分と不溶性画分に分けたところ、目的タンパク質は不溶性画分にのみ局在していた。タンパク質を解析するためには可溶性にする必要があるために、現在、可溶性にすべくさらなる条件検討を行っている。