枯草菌における機能未知新規低分子RNA遺伝子群の検索と発現様式の解析

               田中美紀 指導教官:中村幸治 責任教官:山根國男

目的

現在、触媒活性を持つ低分子RNAが様々な生物で発見されており、以前考えられていたよりも多くの生命現象に関与していることが明らかにされており、また未だ機能が明らかになっていない低分子RNAも次々と報告されている。従って、未知のRNAを探し出し機能を解析することはRNAの機能の多様性や、生命現象を知るうえで大変重要であると考えられる。現在までに、枯草菌( Bacillus subtilis )で同定されている低分子RNAはscRNA, RNase P RNA, tmRNA の3種類である。これらのRNAは、他の生物においても保存されていることがすでに知られている。枯草菌は、ゲノムプロジェクトにより全塩基配列が決定され4100個の遺伝子の存在が明らかになり、同時に、ORFを形成していない領域であるスペース領域も数多く存在することがわかった。このスペース領域は、いまだに明らかにされていない遺伝子をコードしている可能性が考えられる。また、これらの領域にはプロモーターとして機能しうる配列が存在する場合が多く、新規のRNAをコードしている可能性がある。そこで本研究では、グラム陽性細菌である枯草菌において、タンパク質をコードする領域に挟ま! 黷ススペース領域123ヶ所について新規の低分子RNAの探索を行い、転写が確認された低分子RNAの発現様式を解析することを目的とした。

方法

本研究では、500塩基以上のスペース領域に着目し、新規低分子RNAの探索を行った。プローブを作成するために、スペース領域内にプライマーを作成し、PCRにより目的とする断片を増幅させた。その断片を用いて、プローブを作成し、対数増殖期および胞子形成時の菌体より調製したRNAに対して、ノーザンブロッティングを行うことにより、スペース領域内の転写産物の有無を探索した。

結果および考察

枯草菌をLB培地で培養し、対数増殖期のRNAを調製した。そのRNAに対し、ノーザンブロッティングを行ったところ、約10ヶ所のスペース領域から転写産物が確認された。また、枯草菌において胞子形成時のRNAを調製し、そのRNAに対しノーザンブロッティングを行ったところ、対数増殖期に転写の確認されたいくつかの領域からは、胞子形成時にも、転写産物が確認された。

(今後の予定)

 今回転写が確認されたRNAについて、発現時期の解析を行うと同時に、破壊株の作製を進めていきたいと考えている。