〜喘息におけるGATA-3の機能〜

 気管支喘息は持続性の好酸球性炎症が本態であると考えられている。また、近年の研究により、気管支喘息とTh細胞(ヘルパーT細胞)との関係が明らかにされてきた。Th細胞は、Th1Th2細胞に分類されるが、Th2細胞は好酸球の活性、増殖を促進させるサイトカインを産生する。このTh2細胞の分化は転写因子GATA-3により誘導されることが明らかになりつつある。そこで、喘息におけるGATA-3の重要性を明らかにすることを目的として、今回の研究を行なった。

<実験目的>

 遺伝子導入により、T細胞特異的にGATA-3を過剰発現するマウス(VA-GATA-3Balb/c)に、喘息を誘導してその評価を行ない、遺伝子を有しているもの(VA-posi)と遺伝子を有しないもの(VA-nega)を比較することにより、GATA-3過剰発現の喘息発症における影響を解析する。

<実験方法>

 VA-GATA-3Balb/cマウスをOVA(卵白アルブミン)で免疫、抗原暴露を行ない喘息を誘導した。喘息の病態評価の方法として、BALF(肺胞洗浄液)内の好酸球の割合の算出、肺組織への好酸球浸潤の観察(ライトギムザ染色)、血清中のOVA特異的IgE量の測定(ELISA)、血清またはBALF中のサイトカイン(IL-4,IL-5,IL-13,INF-γ)量の測定の4つを中心に解析する。

<結果>

 BALF中の好酸球の割合、血清中のOVA特異的IgE量の測定結果では、VA-posinegaにおいて、有為差はみられないもののposiのほうが測定値が高いという結果が得られた。肺組織中への好酸球の浸潤は両者ともに強くみられ、明らかな差はみられていない。サイトカイン量の測定は現在おこなっている途中である。

 今回の実験系では喘息の誘導がかなり強くかかっており、導入遺伝子の影響はみられているようではあるが、顕著ではない。この要因として、強力な喘息の発現誘導により、negaのマウスでも内因性のGATA-3up-regulateされ、喘息の発症が強くなっていることが考えられる。そこで、OVAの量を減らした実験系で再度実験を行なうことを検討している。