ニワトリ体軸筋におけるトロポニンTの発現

 

no.980814  深田 伸洋    指導教官  平林 民雄

 

導入・目的> 筋肉調節タンパク質の一つであるトロポニンTTT)には速筋、遅筋、心筋遺伝子にコードされている3種類のアイソフォームが存在する。速筋アイソフォームはさらに選択的スプライシングによって生み出される胸筋型(B−タイプ)と肢筋型(L−タイプ)と呼ばれる複数のアイソフォームから成る。先行研究において、ニワトリの前肢の筋肉では同一筋肉中において体軸に近い部分がB−タイプアイソフォームをより多く発現し、体軸から遠ざかるにつれてL−タイプアイソフォームの発現が多くなることが示されているが、前肢以外の筋肉でのTTアイソフォームの発現勾配は確認されていない。そこで私はニワトリの背中の筋肉におけるTTアイソフォームの発現勾配の有無を調べた。前肢でTTアイソフォームの発現勾配が形成されるためには発生段階の初期に体節から移動してくる筋前駆細胞の細胞系列と移動時期が重要であると考えられているが、体軸筋は体節から直接形成されるので、前肢の筋とは異なる発生過程を経る可能性がある。また、前肢の発現勾配形成に関与している軸は近位―遠位軸であるが、背中の筋肉では前後軸方向を筋が走行している場合が多いので、本研究では前後軸に沿ったTTアイソフォームの勾配を調べた。

 

方法> ニワトリの背中から、頸部二腹筋、前滑背筋、表面ひし形筋、後滑背筋、棘下筋、深部ひし形筋、でん部直筋、尾部挙筋を採取した。それぞれの筋肉を前部側と後部側の二つに分け、アガロースIEFゲルを用いた電気泳動のあと12.5%アクリルアミドを用いたSDSPAGEを行い、抗TT抗体を用いたウェスタンブロッティングによってTTアイソフォームの勾配を調べた。

 

結果・考察> 現在までに頸部二腹筋および前滑背筋でのウェスタンブロッティングパターンを得た。これらの筋肉においては前部側と後部側でTTアイソフォームの発現勾配は見られなかった。また、予備実験で、棘下筋では筋の前後軸にそって勾配らしきものが観察された。

 

今後の展望> 今後は体軸筋の形成も前肢の場合と同様に筋芽細胞の細胞系列によるものかどうかを調べるため、細胞培養や奨尿膜上組織培養などの実験を行って調べて行きたいと考えている。