キュウリ導管液タンパク質の光周期依存的産生に関わる研究

福田 恵之

担当教官:佐藤忍

【背景】

 高等植物の導管液中には土壌から吸収した水及び無機栄養素の他にも、土壌の状態や、地上部の環境情報を感知して根が産生したサイトカイニンやアブシジン酸が存在する。これらは地上部に導管を介して輸送され、植物体の生長や機能に積極的に関与している。さらに近年、根が産生する導管液には、糖質やタンパク質をはじめとする多種多様な有機物質が存在することが明らかになっている。なかでも、キュウリ導管液中に存在するレクチン様タンパク質(XSP30)は、その遺伝子発現が根特異的であり、光周期に依存して暗期誘導型のリズム性を示すことが明らかになった。このことから、XSP30以外にもその産生と遺伝子発現が光周期などの地上部環境により制御される導管液タンパク質が存在すると考えられる。

【目的】

 光周期などの環境要因によって変動する導管液タンパク質を網羅的に解析することによって、高等植物における、光周期応答をはじめとする環境応答機構を解明することを本研究の目的とする。

【方法】

 長日条件(16時間明期/8時間暗期)で栽培したキュウリの地上部を明期の開始点、明期の中間点、暗期の開始点、暗期の中間点の4点でそれぞれ切除し、根導管液を1時間氷上にて採取した。得られた導管液中のタンパク質を100%アセトンにて沈殿させ、得られた沈殿を再溶解し、pIレンジ3-10の等電点電気泳動による分離を行った後、11%SDS-ポリアクリルアミド電気泳動による分離、銀染色による染色を行った。各4点で得られた電気泳動像を比較し、特異的に大きさの変動するスポット等、光周期等に依存にしてその産生を制御されていると思われるタンパク質スポットを探索した。

【結果と考察】

 得られた電気泳動像から、キュウリ導管液中には少なくとも65種類のタンパク質が存在することが判明した。またこれらのなかでで明期に誘導されるタンパク質が5種類、暗期に誘導されるものが5種類検出された。今後これらのタンパク質をはじめ、他の環境条件に応答するタンパク質に関しても、アミノ酸配列決定や遺伝子の単離・解析を行うことによって、導管液タンパク質の機能や地上部と地下部の情報伝達に関しての新しい知見を得ることを目的に、研究を行っていこうと考えている。