移動平均法による白鷺類のコロニー及び塒の分布解析



発表者 山岸 良子 指導教官 徳永 幸彦


目的と背景

 コロニーや塒が何故形成されるのか、この疑問の答えとして多くの研究から3つの説明が考えられてきた。1つ目の説明は、餌資源を有効に活用して採餌効率を上げるために、コロニーや塒を作るというものである。2つ目は、捕食者を避けるためであり、3つ目として繁殖成功度を上げるためという理由が考えられている。白鷺類のコロニー、塒はこれらの要因が複雑に絡み合って形成されていると言える。今回、茨城県及びその近県 (100km100km) に生息する白鷺類を研究材料として、コロニー、塒の分布について調査した。この地域において白鷺類の成鳥に対する捕食者は存在せず、コロニーや塒の分布は餌となる食物の量や分布に深く関係していると思われる。そこで本研究では餌資源の分布がコロニーあるいは塒の形成にどのような影響があるのかについて調べることを目的とした。

方法

 コロニーや塒の分布が餌資源の分布で説明できるかを調べるために、まず、国土地理院の地形図 1/25,000を使って研究エリア内を200×200の格子に分け、鷺にとって重要な餌場を蓮田、水田、水辺に分類し、格子上の 餌情報を読み取った。3つの餌場における鷺の利用率、採餌効率を過去のデータに基づいてまとめ、3つの餌場の評価値を決定し、移動平均法を用いて研究エリア内での各格子点における合計評価値を計算した。次に、実在したコロニー、塒の存在する格子点の合計評価値の平均値と、ランダムに研究エリア内から選び出した格子点の合計評価値の平均値を比較して、白鷺類が採餌効率を最大にする場所に、コロニーや塒を形成しているのかどうかを統計的解析を行い考察した。また、実在のコロニーや塒がある位置が最適であるという仮定のもとに、蓮田、水田、水辺の3つの餌場の評価値を逆計算した。

結果及び考察

 3つの方法から求めた結果から、餌資源分布とコロニー塒の分布の関係について考察した。実際のコロニーや塒の場所は移動平均法による推定ではうまく説明できない場合があった。これは、移動平均法において白鷺個体が全知全能であるという仮定が非現実的であることと、3つの餌場の評価値が研究エリア全体で一定なため、餌資源に関して、各コロニーあるいは塒のまわりの局所的な評価のばらつきをうまく反映できなかったという理由が考えられる。これらの結果、考察を踏まえて、実在したコロニーや塒1つずつとその場所に即した餌資源との関係を考え、全知全能ではない白鷺類のモデルを作成し、コロニー及び塒の分布と餌資源の分布との関係についてさらに考察する。