堀 輝三 教授
HORI Terumitsu
Tel: 0298-53-4558, 6657
Fax: 0298-53-4558, 661
E-mail: horiteru@sakura.cc.tsukuba.ac.jp
研究領域:植物形態学、細胞構造学
研究テ―マ:下等植物、裸子植物の細胞構造、細胞分裂機構、細胞小器官の構造と機能の解析
研究の概要
生物、特に下等植物(緑藻類、ハプト藻類など)や裸子植物の進化に興味をもち、その歴史を、現世に生きるこれらの仲間の細胞が示す種々 の生命現象、多様な構造、形態の解析から解明しようとしている。そのため、次のようなテーマで多面的に研究を行っている。
1 細胞分裂(核分裂、細胞質分裂)の微細構造的機構を電子顕微鏡レベルで比較形態学的に解析する研究;
今までの研究で、植物の細胞質分割の機構にはいろいろな様式があることがわかってきた。特に緑色植物では、その様式の違いは、それぞれの植の進化系統の違いを反映していると考えられている。現在、緑色藻類の最も原始的な細胞分裂機構を探索する研究を行っている。
2 遊泳細胞(鞭毛藻、配偶子や遊走子等の生殖細胞)に備わる鞭毛装置構造の解析;
下等植物の鞭毛装置構造は、高い保守性を維持している。そのため、鞭毛装置構造に関するいろいろな形質は、植物の系統を探るうえで非常に有効である。当研究室は形態学的およびタンパク組成の比較から研究を行い、原始的な鞭毛装置構造の探索をおこなっている(文献 1,2)。
3 緑色植物における生殖機構の研究;
植物が高等化するにしたがって、生殖様式は同形配偶から異形配偶へ変わっていく。また、配偶子の合体を仲介する接合構造や精子の形態にも多様性がみられるようになる。受精遂行におけるこれら構造装置、形態の多様性の意義を解析して、有性生殖の進化を考察している。
4 イチョウ、ソテツの生殖機構の研究;
イチョウとソテツは種子植物の中でも鞭毛をもった精子をつくる希有な植物である。このことは100年前、日本人の研究者によって発見された、偉大な成果である。おもしろいことに、これらの植物の卵細胞は植物界きっての大きさの卵でもある。そのような対比的な生殖細胞における受精がどのように行われるかは、まだよくわかっていなかった。当研究室の研究の結果、卵細胞に精子の核を受容する構造が分化していることが明らかになった。現在、精子がどのように造卵器に進入するかを、解析している(文献 3,4,5)。
5 緑色植物における細胞質遺伝の研究:
植物の有性生殖にともなって、細胞質の伝達が行われるが、特に葉緑体の伝達と受精後のその運命について細胞生物学的、微細構造学的に解析し、葉緑体の母性、父性、両性遺伝機構を研究している。
6 ピレノイドの構造と機能の研究:
隠花植物の葉緑体には、ピレノイドとよばれるれる付属器官が備わっている。近年の研究でこの付属器官は光合成に関与する酵素、(RuBisCo)を大量にもつことが明らかにされたが、当研究室ではさらに葉緑体DNAの全量がそこに局在するピレノイド群を発見した。現在、このDNA の機能を解析中である。この研究によって、共生による葉緑体核の進化の歴史を解明する手がかりが得られるものと考えている(文献 6)。
7 緑色鞭毛藻(プラシノ藻)の細胞学的研究;
緑色植物の原始型はプラシノ藻群にみつかるは、ずであるという考えの基に、この生物の細胞構造や生物現象を電子顕微鏡レベルで解析し、その知見を基に、進化系統の解析、分類を行っている(文献 7,8)
参考文献
( 学生諸君が入手し易い、一般雑誌、著書の中から関係著述を挙げ、専門論文は除いた)
1 堀輝三:プラシノ藻の鞭毛装置構造の多様性。細胞 22:464-469, 1990.
2 堀輝三:緑色植物の祖先型の鞭毛装置。CellScience 7:662-668, 1991.
3 堀輝三:イチョウとソテツの「精子学」。朝日百科:植物の世界、No.130, p.318-320, 1996.
4 堀輝三:イチョウの精子-その観察法-。遺伝 50:21-26, 1996.
5 堀輝三:平瀬作五郎のイチョウの精子発見から百年。ミクロスコピア 13(1):4-10, 1996.
6 宮村真一・堀輝三:オルガネラDNAからみたピレノイド。植物細胞工学 14:395-404, 1992.
7 堀輝三:緑藻(=アオサ藻)・褐藻・紅藻の細胞構造。プランタ 21号:25-30, 1992.
8 渡辺信・堀輝三(共訳):陸上植物の起源―緑藻から緑色植物へ―。内田老鶴圃, 1996.