つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2002) 1: 114-115.

特集:生物学類の国際交流事業

筑波大学生物学類の国際交流 ―その現状と今後の方針―

白岩 善博 (筑波大学 生物科学系)

 筑波大学生物学類では、1999年に英国マンチェスター大学生物科学部と学部間交換学生協定を締結し、留学生の受け入れと派遣を積極的に行ってきた。マンチェスター大学は、1851年に創立された創立150年のイングランドで 最初の都市大学の一つである。20世紀における数多くの発明に貢献し、現在までに20人以上もの当校の教授および 卒業生がノーベル賞を受賞している。世界初のコンピューターは1948年に当大学で生まれたことで知られる。3000 人以上の教員、2万人近い学生を擁し、人文科学、経営学、経済・社会学、教育学、法学、医学・歯学・看護学、自 然科学・工学、生物科学の9学部などにより構成され、70以上の学科に分かれている。会計学、哲学、神学・宗教学、音楽の分野では国内最高水準の研究レベルを誇り、教育内容では、人類学、ビジネス、化学、コンピューター、 地理学、地質学、法学、機械工学、音楽、社会政策学の分野で非常に高い国際的な評価を受けている大学である[1]。

 1999年9月から毎年1名ずつ合計3名の留学生をマンチェスター大学から受け入れ、2000年9月からは、毎年3 名ずつ合計6名の当生物学類生をマンチェスター大学へ派遣してきた。現在、さらに3名の生物学類生が留学中で ある(別表参照)。

期 間 派遣・受入 氏 名 研究分野 指導教官
1999.9-2000.6 受入 K. H. Ong 微生物科学 神戸 敏明
1999.9-2000.6 受入 D. Manidasa 動物生態学 藤井 宏一
2000.9-2001.6 受入 M. Lawton 発生生化学 平林 民雄
2001.9-2002.6 受入 A. Bowen 神経生理学 斉藤 建彦
2000.9-2001.6 派遣 安藤 邦恵 Movement Disorder J. M. Brotchie
原浦 麻衣 Neuroendocrinology H. D. Piggins
渡辺 芳武 Plant biology M. J. Emes
2001.9-2002.6 派遣 岡平 史世 Biochemistry E. Stewart
鈴木 郁美 Bacterial Pathogenesis I. Roberts
中尾 優希

2002.9-2003.6 派遣 武田 修学

小林 泰平

坂下 俊秀

 協定に基づき、次に示す便宜的処置を与え、支援している。(1)本交換留学生として3年生の9月から留学した 場合、帰国後は、留年することなく本学類の4年生として2学期から復学できる。4年生の9月から留学した場合、 帰国後取得総単位数を確認の上、卒業判定を行う。この間、休学などの必要はない。(2)マンチェスター大学における入学金と授業料を免除する。ただし、筑波大学に対する授業料の納付義務がある。(3)マンチェスター大学で取得した授業の単位を筑波大学でも取得単位として振替認定する。(4)マンチェスター大学の課題研究についてレポートの提出を求め、それを元に該当する単位の振替を行う。また、帰国後、筑波大学においても希望の研究室で卒業研究ができる。その際、教官一人当りの人数制限には束縛されない。(5)マンチェスター大学での学生寮居住を保証する。ただし、現実には、語学力やカリキュラム編成上の相違の関係から、授業および実験の単位取得は容易ではなく、これまでは所属した研究室での課題研究がその主な実施項目となっている。

 マンチェスター大学への留学生の選考は、毎年10月に次年度の9月からの留学生分について行っている。これは 日本国内で各種財団などから提供される留学生向けの奨学金の申請期限が1-1.5年前となっていることや、早く留学生を決定することによって、英会話力等の向上、留学後の聴講授業の選択や所属研究室の決定等の留学準備をスムーズに行うためである。従って、3年次の9月に留学する学生は、2年次の7月頃からTOEFL受験等の準備に入る必要がある。選考は学類での成績、TOEFLの評点および面接試験により行っている[2]。

 上記の協定大学以外では、米国カリフォルニア大学やオーストラリアCanberra Institute of Technology大学へ留学(1年間)した学生がいる。また、文部科学省による留学生受け入れ制度を活用し、現在、2名の私費外国人留学生、1名の大学間協定による交換留学生の合計3名を韓国から受け入れている。

 生物学類では、積極的に学類レベルでの国際交流を推進していく方針であり、留学生の派遣および受け入れの推進を含めて、その体制をさらに整備していく方針である。現在、生物学類内に、学類長、教官(留学生選考委員会委員)、留学経験のある学類生、外国人教師、学類学務担当者、学類技官およびアドバイザー(留学経験のある大学院生)を構成員とする「生物学類国際交流委員会」を組織し、単なる留学の指導・支援に留まらず、国際交流に関する情報提供を積極的に実施し始めたところである。その主な任務は、生物学類の国際交流に関する広報活動、派遣および受け入れ留学生の支援、国際交流ホームページの原案づくり、学類学生へのアドバイス、外国へ留学中の学生との交信、留学情報の収集、受け入れ留学生との交流イベント企画等である。また、留学経験者、外国人留学生、学類生および教官を含めた交歓会を定期的に実施する計画も立てている。その成果として、学類生の国際交流への関心を高め、語学力やコミュニケーション能力の向上、留学生との交流を通した学生の国際感覚を実際の経験を通しての育成などを目指しており、徐々にではあるがその成果が目に見える形で現れてきている。一例としては、 外国人による大学院向けセミナーへの学類生の積極的な参加、TOEFLなど国際的な語学検定の受検の増加、学類卒業後に外国の大学院へ進学する学生の増加などである。

 生物学類では、生物英語授業担当の外国人講師と生命倫理学専攻の助教授の2名の外国出身教官を擁し英語による授業を実施するとともに、少人数方式による学類担当教官による生物英語教育カリキュラムを充実させてきた。現在、それらのカリキュラムとその他の特別な支援活動をとおして、教官および大学院レベルでの国際交流を学類レベルまでに拡大するよう努力中である。

参考文献
  1. マンチェスタ−大学ホームページ http://www.manchester.jp/top.html
  2. 筑波大学生物学類ホームページ 国際交流 http://www.biol.tsukuba.ac.jp/cbs/
Contributed by Yoshihiro Shiraiwa, Received September 29, 2002.

©2002 筑波大学生物学類