つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2, 106     (C) 2003 筑波大学生物学類

空撮写真によるシラサギ類コロニーの個体数推定及びその分布解析

遠山 貴之 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官:徳永 幸彦 (筑波大学 生物科学系)


背景と目的

 集団繁殖性サギ類は、広範囲に及ぶ行動圏を持ち多様な餌生物相に支えられる高次捕食者であるため、広域的な環境指標として古くからその生態が研究されてきた。 サギ類コロニーの個体数調査は難しく、今まで様々な方法が用いられてきたが、その多くが高いコストや繁殖の撹乱、または信用性の欠如といった問題を抱えていた。そこで本研究では小型ラジコンを用いた航空写真撮影による、新しい個体数推定方法を提案する。

方法

 2002年5月後半から6月後半にかけて、茨城県及びその近県におけるサギ類コロニーの個体数調査を行った。調査に際し、小型ラジコンSky Surfer(製造元、株式会社グリーン)を使用した。これは一般向けに販売されており、簡単な操作で上空からの写真撮影が可能である。写真は画像ソフトに取り込んでコロニー全体をとらえた一枚の合成写真に仕上げ、これをもとに白鷺類の個体数を直接カウントした。ただし写真からは種の判定が難しいため、地上調査により得られた種構成比から種別個体数を計算した。

結果と考察

 2002年度に確認された15ヶ所のコロニーのうち12ヶ所において撮影に成功し、各コロニーにおける種別個体数を割り出した。残り3ヶ所については、地形の特性や撮影技術の不足などにより今回は撮影を見送った。この方法により、白鷺類の個体数のみならず、アオサギの巣数やその分布状況など地上からはわかりにくい情報が適度な費用で入手可能となった。航空写真による個体数調査については多くの研究でその信用性が議論されているが、本調査地におけるコロニーの植生や地形などの観点から、この個体数推定方法の信用性は十分に高いと考えられる。