つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2003) 2, 75     (C) 2003 筑波大学生物学類

アーキア由来核酸関連酵素の研究

松浦 孝幸 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官:小林 達彦 (筑波大学 応用生物化学系)


 

[背景・目的]

 生物の細胞内で機能する核酸関連酵素には様々な種類のものが存在する。主要な働きをする酵素には、それぞれの生物に共通に存在するものも数多くあるが、生物種に特有な酵素や機能の異なるものなども多数存在する。最近までユーカリアに特有の核酸修飾酵素であるといわれていたものが、近年の研究によりバクテリアにも存在することが明らかになるなど、新たな事実が発見されてきている。しかしながら、生物界の第三のドメインであるアーキアにおける核酸修飾酵素の研究はあまり多くはなされていない。

 当研究室ではすでに、このユーカリア特有の酵素と相同性の高い数種類のORFを超好熱性アーキアより取得している。本研究では、このORFから発現するタンパク質を単離精製してその機能を解析し、アーキアにおけるこの核酸修飾酵素の存在とその機能を突き止めることを目的としている。

 

[研究方法]

 ゲノム情報を基に設計したプライマーを用い、目的遺伝子をPCRにより増幅後、発現用ベクターに挿入した。次に、構築した発現ベクターを用いて目的タンパク質を大腸菌内で大量発現させ、熱処理、硫安分画やイオン交換クロマトグラフィーなどの方法を用いて、それぞれの組換えタンパク質について単離精製を行なった。

 

[結果・考察]

 現在、数種類のORFについて、目的タンパク質の大量発現系の構築とその単離精製に成功しており、放射性同位元素を用いての活性測定を進めているところである。ユーカリア・バクテリアにおける核酸修飾酵素との共通点・相違点や、その機能の解明が期待される。