つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200410JM1.

特集:植物の世界(平成16年度筑波大学公開講座)

社会人対象公開講座

宮崎 淳一(筑波大学 生命環境科学研究科,生物学類公開講座委員)

 10月2・3日の2日間にわたって、「植物の世界」というタイトルで生物学類開設の社会人対象の公開講座を行った。下田臨海実験センターや菅平高原実験センターでは毎年このような講座が行われているが、本学では数年ぶりの開講となった。大学が法人化され、社会教育や生涯教育をはじめとする社会貢献への要請がますます高まっている。それに応えるために生物学類では様々な社会貢献事業を行っているが、その一環として今年度から新たな社会人対象の公開講座も開設し、生物学類の社会教育・生涯教育に対する積極的な姿勢をアピールすることを目的とした。

 今回の講座では30名(定員30名)の受講希望者があり、そのうち28名(うち男性は11名、女性は17名)が実際に参加した。つくば市や土浦市をはじめとして茨城県内の各地からの参加者が主であったが、県外からは埼玉県北葛飾郡杉戸町から1名の参加があった。今回は久しぶりの開講であり、どのくらい受講者が集まるかまったく予想できなかったため、講座に関する広報は学務部の教育公開係にまかせ、生物学類としては積極的な広報活動を行わなかったが、定員を満たす受講希望者があった。

 生物学類関連の講演者は、井上勲先生(「植物と動物の境界線」)、横浜康継先生(「カラフルな海藻は語る」)、堀輝三先生(「イチョウの歴史」)、鎌田博先生(「遺伝子組換え植物」)であり、本学以外ではミュージアムパーク茨城県自然博物館学芸員の小幡和男先生(「湿地と絶滅危惧植物」)に講演していただいた(日程などは下に示した講座用資料の表紙を参照)。それぞれの講演内容は現代の植物学の分野で話題になっているものであり、そのため積極的な広報活動を行わなくても定員を満たす受講希望者があったものと思われる。また、1日目の午後に、井上勲先生による植物の電子顕微鏡観察と路川宗夫技官による筑波大学構内の植物探索を実習として行った。

 講演終了後に行ったアンケート調査では(無記名、24名提出)、講座全体をとおして18名の受講者が内容を「理解できた」と回答した(記入無し2名、理解できたとも理解できなかったとも言えない4名)。今回の講座は、植物に関連することに限定されているとはいえ、非常に広範な内容を含むものであったが、参加者は非常に熱心に受講し、質問なども積極的に行っていた。また、もともと植物になんらかの関心がある方が参加したと思われるので、かなりの受講者が内容を理解するに至ったと思われる。また、実習も好評で、今回のような機会が得られたことを楽しんでいる様子であった。

 また、今回の講義のやり方(話のスピード、板書、資料配付、OHPやPCプロジェクターによる説明など)について、24名中17名が「適切であった」と回答した(記入無し1名、「適切でなかった」3名、どちらでもない3名)。適切でなかったと回答した方やその他の方のコメントの中に、講義や実習の時間をもっと長くしてほしい(もっと詳しく知りたい、もっと時間をかけて平易に説明してほしい、実習を2つやるには時間が不足)という要望があった。また、休憩時間や昼食の時間が短すぎるという指摘があった。各講演者は、生物学になじみのない方にも理解できるように限られた時間の中で最大限の努力をしていたようにみえたが、もう少し時間をかけて説明できれば、より受講者の理解を深めることができたかもしれない。また、休憩時間や昼食時間については、質問が多数あっため、その対応が休憩時間まで食い込んでしまったことや、講義中に提示できなかったスライドを付加的に昼食時間中にも上映したために、時間が短すぎるとの印象を与えてしまったのだと思われる。今後は、講義・実習の時間および休憩・昼食時間にもう少し余裕をもたせる必要があると思われる。

 アンケート調査では24名中22名が今回の講座に「満足した」と回答し(満足したとも不満足とも言えない2名)、今回のような講座を「今後も続けてほしい」と大多数の受講者が希望していたので、十分な成果が得られたと判断した。

 最後に今回の講座では、社会貢献を目的としていたため講習料を徴収しなかった。その結果、本講座の担当者には謝金無しのまったくのボランティアでやっていただくことになってしまった。このようなかたちでお願いするのは非常に心苦しいことであったが、すべての担当者から快諾をいただき、生物学類ならびにミュージアムパーク茨城県自然博物館の構成員の社会貢献に対する深い理解と積極性を感じることができた。世話人として、この場をかりて担当者に深くお礼を申し上げたい。

 下に公開講座で受講者に配布した資料を示すが、これは公開講座担当者の自己紹介および現在の活動の紹介と講演・実習の要旨を各担当者にお願いして作製したものである。(現生物学類教官の井上勲先生と鎌田博先生の自己紹介および現在の活動の紹介については、つくばジャーナルの研究紹介(Vol.3No.8,2004)から引用した。)

Contributed by Junichi Miyazaki, Received October 8, 2004.

©2004 筑波大学生物学類