つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200410YYP.

横浜 康継(Yokohama Yasutsugu)  志津川町自然環境活用センター

〒986-0781宮城県本吉郡志津川町戸倉字坂本40
センター所長(元筑波大教授・元筑波大学下田臨海実験センター長)
Tel: 0226-46-9109
Fax: 0226-46-9115
E-mail: sznature@arion.ocn.ne.jp 





〔これまでの研究と活動〕 

下田臨海実験センターにおいて
 海藻の世界においても、南北間あるいは浅所と深所との間で生育する種類が変わるが、その理由について、温度および光の質・量と光合成との関係から調べるという研究を進める一方、海中の森(大型海藻の群落)の生産量について潜水作業も行って調べた。それらの研究のうちで最も印象的だったのは、緑藻類に属しながら深所に生育し海松(ミル)色を帯びている種類が赤い色素を含むこと、そしてその正体が本来は黄色のシフォナキサンチンというカロテノイドである、ということを発見できたことである。緑藻類の色素についての研究から、地球環境の歴史に関心を持つようになり、美術専攻のアシスタントの助言もあって、地球環境問題を本質的に理解する糸口としての「海藻おしば講座」を20年ほど前から始めた。

志津川町自然環境活用センターにおいて
 5年前の定年退官直後に宮城県の志津川町に移り、町立の自然環境活用センターを長年夢に描いていた「チビッコ研究所」に変えるという構想に着手した。まず下田で確立した「海藻おしば講座」を開始し、スタッフと施設・設備の充実をはかった結果、現在スタッフは6名となり、設備には宮城県からの補助金と町費で購入した走査型電子顕微鏡も加わることになった。活動内容も、磯観察やスノーケリング・スキューバダイビングによる海中観察へと幅が広がり、高校生対象の公開臨海講座は4回目を終え、これを体験した地元の高校生の一人は本年筑波大学へ入学した。利用者としては小中学生が多いが、高齢者や主婦等による利用も活発であり、また総合学習に悩む教師への対応も多い。当センターにおける活動の基本理念は「生きているとは」であり、それを知る手段として、自然における生物の生き方の観察や漁業や農業などの一次産業の体験を位置づけている。  


©2004 筑波大学生物学類