つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3, XX   (C)2004 筑波大学生物学類

2種のマルハナバチの自然巣におけるコロニー発達について

星野 弥弥 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官: 藤井 宏一 (筑波大学 生物科学系)


はじめに
マルハナバチは一年性の生活史をもつ社会性昆虫であり、コロニーや採餌などに関して今日では多くの研究者によって研究がなされている。 しかしこれらの研究で用いられるコロニーは自然巣ではなく、春先に女王を捕獲し実験室内で飼育したコロニーや、商業用に販売されているコロニーが多い。 現在日本では、商業用として外来種のセイヨウオオマルハナバチが用いられているが、帰化の問題が危惧されている。 日本では在来種は14種が知られているが、特にコマルハナバチとトラマルハナバチは本州の低地で最もよく見られる2種であり、農業地や公園などに人工的に植えられた植物の花から採餌を行っている。 このような在来種のコロニーの動態を研究することは在来種の農業利用への基幹となる。 本研究では発見されたコマルハナバチとトラマルハナバチの自然巣からコロニーの発達に関して考察する。

方法
茨城県笠間市で6つのコマルハナバチのコロニーを、つくば市と北茨城市小川で、それぞれ1つずつトラマルハナバチのコロニーを発見した。 コマルハナバチの巣については、巣の入口で出入りする個体を捕まえ胸部に標識をつけて放し、標識再補法による採餌個体の個体数推定をすると共に、コロニー活動の衰退を採餌個体の巣の出入りする回数の減少から見定め、6月下旬に掘り出した。 コマルハナバチについては、巣の出入りで記録された新女王の数から逆算し、直径が11mm以上の繭を新女王を産出する繭として同定し、新女王数を推定した。 トラマルハナバチについては、活動が終わる9月にコロニーを掘り出した。 8つのコロニーは実験室に持ち帰り巣の解剖を行った。

結果と考察
ワーカーを多く生産するコロニーはワーカーをあまり生産しないコロニーよりも新女王を多く生産するとこれまでの研究でいわれているが、自然巣においてもそのような関係が検出できた。 また、どちらの種においても生存するワーカー数と養育される段階の個体(蛹、幼虫、卵)の数に、正の相関関係が見られた。 さらに、全ての巣内において、スムシやダニ、甲虫の幼虫などの寄生、または共生昆虫が発見されており、これらの昆虫も自然状態でのコロニー発達に影響を与えていると考えられる。