つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3, XX   (C)2004 筑波大学生物学類

微生物由来二トリル分解酵素の解析

増田 尚徳 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官: 小林 達彦 (筑波大学 応用生物化学系)



【目的】
      本研究室ではこれまで、二トリル代謝系に関連する酵素および遺伝子の基礎・応用研究を行っている。本研究で解析したニトリル分解酵素は、従来より知られているニトリルヒドラターゼと同様にニトリルをアミドに変換する反応を触媒するものの、従来のニトリルヒドラターゼとは全く異なる一次構造を持つ酵素である。また、こまでに詳細な研究は行われておらず、活性アミノ酸の同定を含め、その反応機構は未知である。そこで本研究では、本ニトリル分解酵素の発現・精製および諸性質の検討を試みた。


【方法・結果】
      本酵素をコードする遺伝子をPCRで増幅し、本酵素の発現プラスミドを構築した。まず、数種類の大腸菌を形質転換し、その中から、本酵素が可溶性画分に発現し分解活性を示す最適宿主を探索した。次に、温度・培地量・培養時間などのパラメータを変えて培養することで、大量発現条件を検討し、最適培養条件を決定した。本条件下で、大腸菌形質転換体を大量培養し、得られた菌体から本酵素の精製を行った。様々なクロマトグラフィー条件を検討した結果、弱陰イオン交換カラム、疎水性カラム、強陰イオン交換カラムうを組み合わせた本酵素の精製スキームを確立し、SDS-PAGE上で単一バンドにすることに成功した。本精製酵素に対し、スペクトル解析、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量の決定、含有金属分析などを行い本酵素の物理化学的諸性質を解明した。今後、本酵素の他の諸性質を解析していく予定である。