つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3, XX   (C)2004 筑波大学生物学類

13C-メタンを用いた新規メタン資化性菌およびメタンモノオキシゲナーゼ遺伝子の探索

真弓 大介 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教官: 中島 敏明 (筑波大学 応用生物化学系)


 現在、世界のエネルギー需要の殆どを担っている化石燃料は石油であるが、その埋蔵量は有限である。石油の枯渇時期に関しては様々な予想がされているが、IEA(国際エネルギー機構)の「World Energy Outlook」によると、石油の産出は2010年〜2020年頃にピークを迎え、それからは減少していくと見られている。

 一方、地球環境保全の観点からよりクリーンな石油代替エネルギーとして天然ガスが注目されている。天然ガスは燃焼させても硫黄酸化物が殆ど排出されず、窒素酸化物も石油や石炭に比べ少ない。また、埋蔵量が大きく、現在の可採年数は約63年と見積もられているものの膨大な資源量の可能性を秘めており、メタンガス(コールベッドメタンやメタンハイドレート)の利用が可能になれば、今後天然ガスの可採年数は飛躍的に増すと言われている。天然ガスの主成分はメタンであり現在は都市ガスとして家庭用や産業用、発電用燃料などとして用いられているが、常温・常圧で気体であるため取り扱いや運搬が制限されてしまう。メタンを有効に活用するためには常温・常圧で液体であるメタノールやジメチルエーテルへの変換が必要である。しかし、メタンのメタノール、そしてジメチルエーテルへの化学的な変換反応はエネルギー的に極めて困難な反応であり、高温・高圧下での合成ガスを経由する二段階反応により行われ安全性やコスト上の問題がある。

 一方、ある種の微生物、メタン資化性菌は常温・常圧下においてメタンをメタノールに酸化できるメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)を用いてメタンを資化することができる。これまでメタン資化性菌を用いた応用的なメタンからメタノール変換が実験的に行われてきたが、メタン資化性菌は成長速度が遅く大量培養が困難であることが応用面で問題である。また、MMOの生化学的・遺伝学的な性質は未だ不明な部分が多い。そのため、メタン資化性菌由来のMMO遺伝子を他の菌体へ組み込み大量発現させる試みやタンパク質工学により活性を上昇させる試みが行われてきたがその実現には至っていない。

 そこで、本研究では土壌から直接抽出したDNA(環境DNA、メタゲノム)からメタン資化性菌由来のMMO遺伝子を取り出し、メタノールを資化できるメタノール資化性菌でのMMO発現と新規MMOおよび新規メタン資化性菌の発見を目的とした。

 そこで、はじめに土壌を13C-メタンを唯一炭素源とし直接培養した後、DNA extraction Spin kitを用いてDNAを抽出したが収量が低くそのサイズも小さかったため、SDSを用いた穏やかな抽出法に変えた結果、大量かつ最大50kbp程のDNAを得ることができた。