横田 英恵 (筑波大学 生物学類 4年) 指導教官: 加藤 光保 (筑波大学 基礎医学系)
背景と目的
老化に伴った動脈硬化の病変には、カルシウムの沈着(石灰化)がしばしば見られる。血管壁に大量のカルシウムが沈着すると、動脈の弾力性は失われ、結果として動脈機能は低下し、心筋梗塞や脳卒中などの臓器障害を引き起こす。
血管石灰化の形成メカニズムはまだ十分に研究されておらず、適切な動物モデルも存在しなかった。我々は動脈硬化の危険因子であるアポ蛋白(a)[apo(a)]に着目し、apo(a)と血管石灰化との関連について、ヒトの動脈硬化標本ならびにapo(a)を過剰発現するトランスジェニック(Tg)ウサギの動脈を用いて病理的解析を行った。
材料と方法
1. 心筋梗塞患者の病理解剖から得られた冠動脈標本
2. apo(a)を導入した7ヶ月齢のTgウサギとコントロールウサギの大動脈標本
3. 1,2の検体をparaffinで包埋し、切片を作成した後、HE染色ならびにapo(a)の免疫染色を行う
4. DP controller(OLYMPUS)を用いて切片を撮影する
5. 4で得られた画像をもとに、動脈壁に沈着したカルシウムの面積をMac Scope (ver.2.58)を用いて計測する
結果
1. ヒトの冠動脈硬化には、カルシウムの沈着部位でapo(a)の沈着も観察された。したがって、カルシウム沈着とapo(a)との間に何らかの相互作用があることが示唆された。
2. apo(a)Tgウサギでは、大動脈壁に沈着したカルシウムの量は、胸大動脈、腹大動脈のいずれにおいてもコントロールウサギより高度であった。特に、腹大動脈における沈着の度合いは、コントロールウサギの約3倍であった。