つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200407KI.

特集:大学説明会

施設見学 ―TARAセンター紹介編―

石川 香 (生命環境科学研究科1年)
      中田 和人(生命環境科学研究科)  
       

 毎年大学説明会がやってくると、夏が来たことを実感する。

 今回私たちは、参加者が研究室を巡るオリエンテーションの一環として、TARAセンターの紹介を担当した。TARAセンターの見学は遺伝子実験センターの見学とセットになっており、参加者が2グループに分かれて両施設を交互に巡るという方式が取られた。そのため、私たちはおよそ1時間の施設紹介及び見学のプログラムを2セット行うという形で準備を進めた。

 具体的に予定していた内容としては、まず“TARA”という耳慣れない名前の付いた施設について概要を知ってもらうための大まかな説明を聞いてもらい、次にTARAセンターで実際に研究を行っている山本研究室、古久保研究室と、私たち林研究室の簡単な研究内容紹介を、スライドを使って行う。そして最後に、山本研究室の研究室見学を行う、というものであった。

 しかし、実際にはなかなか予定した通りにはいかなかった。当日の流れを振り返りながら、反省点も含めて思い返してみたいと思う。

 まず、開始時間が15分以上遅れた。開始が遅れることはある程度予想していたものの、なかなか参加者が現れない現状を目の当たりにするとさすがに不安が強くなってくる。ただ、この遅れは工夫次第でもっと短縮できるように思う。今回は、昼食前に午後の見学コースについて説明し、午後は直接会場の外で行き先の振り分けをしたようであるが、おそらく一度時間を決めて午前中に使用した教室に全員を集めてから振り分けを行う方が、結果的には効率的かもしれない。開始時間の遅れという反省点はあったが、今回の誘導には昨年までの反省が活かされた良い点もあった。それは、参加人数の管理方法である。以前は上限で打ち切ったつもりでも、列の後ろからぱらぱらと付いてくる参加者がかなり増えてしまい、施設で受け入れ可能な人数を超えてしまうことがしばしばあった。希望する施設をなるべく多くの参加者に見てもらいたいというのが本音ではあるが、入りきれないほどの人数が一気に押し寄せてくると、せっかく足を運んでもらったのに満足いくような環境やプログラムを提供できなくなってしまうため、やはり人数の管理は重要なポイントであった。今回は、予め決まった枚数のステッカーを参加者の服や鞄などに1枚ずつ貼ることでかなり明確に人数の管理や把握ができたようである。実際、30名定員のところを1回目は35人、2回目は37人の参加であり、ほぼ適正範囲であったと思われる。

 次に施設の紹介や研究内容の説明についてであるが、参加者の中に占める高校1・2年生の割合がかなり高いことを考えると、やや難しかったかもしれない。しかし、「先端学際領域研究センター」という名前に足るだけのインパクトは充分にあったように思う。専門的な研究内容や技術の細かい部分までは理解しきれなかったかもしれないが、「何かすごいこと」をやっているようだ、という印象は持ってもらえたと思うのだ。もちろんわかりやすいに越したことはないが、大学説明会という行事の一環として行われているという性格を考えれば、とにかく参加者に何らかの感動や驚き、印象を与えることが重要であり、個々の研究についての深い理解は二の次であると考えてよいのではないだろうか。その意味では、私たちのプログラムは概ね成功だったと思う。

 この点は、最後に行われた研究室見学でも同様である。山本研究室の方が参加者を誘導して広い研究室の中を実際に見せて下さり、たくさんの機器や備品を間近に見る機会を与えて下さった。おそらく参加者の多くは、その一つ一つの機器が具体的に何をするためのもので、どのように有用であるのかを深く理解することはできなかったと思うが、それでもほぼ全員が「すごい」という印象は持ったであろうと推測する。それでいいのだ。研究室内を巡りながら、「わぁ」とか「へぇ」とかいう感嘆の言葉を漏らす参加者の様子を見ていて、そう感じた。

 最後に、TARAセンターを見学するプログラムの全体を振り返って幾つか気付いたことを挙げておこうと思う。

 まず、見学コースのセットになっていた遺伝子実験センターとの連携をもっと強める必要性があると感じた。先にTARAを訪れたグループは次に遺伝子実験センターに行き、先に遺伝子実験センターに行ったグループが次にTARAにやってくる。このシステムでは、TARAセンターと遺伝子実験センターで同時に1回目のプログラムを終えて、参加者をうまく交代させる必要がある。そうでないと、どちらかの施設に2グループの参加者が集結して施設の外で待ちぼうけになってしまうからだ。しかし今回は、TARAと遺伝子実験センターは独自にそれぞれ1時間ずつのプログラムを立てただけで、お互いの連絡手段などを準備していなかった。こうした状況下で開始が遅れたため、第1回目のグループではどうしても準備したプログラムを焦ってこなす気運になり、結果的に林研究室の研究紹介をカットせざるを得なくなってしまった。もし遺伝子実験センターとのリアルタイムな連絡手段があれば、お互いの終了時間を融通してもっと有意義なプログラムが展開できたかもしれないと思うと、残念である。もし来年度も今回と同じような形で施設見学を組むのであれば、ぜひ施設間の連絡手段の構築を考慮に入れたいと感じた。

 また、例年参加者から寄せられる質問の内容が、研究内容や方法論よりももっと現実的なもの(研究者になるにはどうしたらよいか、研究者になってみてよかったと思うか、といったもの)であることが多いことから、研究内容の紹介と同時に、パネルディスカッション形式でもっと参加者と私達が対話できるような機会を設けることも検討したいと思った。そうすることで参加者と私たちの距離がもっと近くなり、より率直で実際に尋ねたいと思っている質問も出やすくなるのではないかと思う。

 以上、今回の施設見学の概要と反省点を振り返ってみた。大学説明会に毎年参加していて感じるのは、生物学類の説明会は年々進歩しているということだ。きっと今年の説明会で得られた様々な反省点が来年に活かされて、よりよい企画がなされるのではないかと思う。独立行政法人化されて大学内もいろいろな動きが出ているが、こうした外部に働きかける行事がこれからますます重要になっていくことは確実であるので、ぜひとも教官・事務官・学生の連携を密にして大学全体が説明会を盛り上げる方向に動いていって欲しいと願う。

Communicated by Jun-Ichi Hayashi, Received August 11, 2004.

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