つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB200501200100767

ポリエステル系生分解性プラスチック分解酵素の精製とその諸性質

高口 均(筑波大学 生物学類 4年)  指導教員:中島 敏明(筑波大学 生命環境科学研究科)

[目的]
従来の石油由来プラスチックとの代替が進んでいる生分解性プラスチックは、資源循環型社会の形成に貢献している。 酵素の基質特異性を利用したポリエステル系生分解性プラスチック廃棄物の選択的モノマー化に よるリサイクルを目的として、高い固体プラスチック分解能を持つ酵素のスクリーニングを行っている。 当研究室保有のLeptothrix sp. 3A株は栄養培地中で生分解性プラスチックである ポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)のペレットを完全分解 可能な細菌である。本研究では3A株由来のポリエステル系生分解性プラスチック分解酵素の精製と 諸性質の解明を目的として検討を行った。

[方法]
Nutrient brothにPBSAのディスクを添加した培地を用い、 3A株を一日振盪培養後、菌体を回収した。これを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、界面活性剤である 0.2%deoxy-BIGCHAPで細胞表面に付着したタンパク質を遊離させ、懸濁液を15,000rpmで10分間遠心し、上清を得た。 上清に30%飽和となるよう硫安を加え氷上で30分間撹拌した。遠心して沈殿を除いた後、60%飽和 となるよう硫安を加え同じく撹拌した後、遠心して得られた沈殿を0.1Mリン酸緩衝液2mlに溶解し粗酵素液を得た。 得られた粗酵素液を陰イオン交換カラム、ゲル濾過カラムを用いた各種クロマトグラフィーにより精製した。
活性測定法にはPBSAをエマルジョン化して混合した寒天プレートに10mm径のペーパーディスクを置き、精製ステップにおける 各溶液を50μl滴下してエマルジョンの分解を観察する方法と、低分子エステルであるp-nitrophenyl acetateを基質とし、 1分間における405nmの吸光度の増加量でエステラーゼ活性を測定する方法を用いた。

[結果]
粗酵素液からプラスチック分解酵素をSDS-PAGEで単一バンドとなるまで精製した。 本精製酵素は分子量約3万であり、 pH5.5〜9.0という幅広いpH範囲で高い活性を維持することが可能であり、25〜40℃で48時間安定で至適温度は50℃であった。 本酵素0.16U/mlで1cm四方のPBSAフィルムを10分で分解し、PBSAはモノマーにまで完全分解された。 また、固体ポリエチレンサクシネート及びポリカプロラクトンに対しても強い分解活性を有していた。


fig.1 左写真:PBSAエマルジョンを重層したNBプレートで培養した3A株(上)とE.coli(下)
   右写真:PBSAエマルジョン寒天プレートにおけるエマルジョン分解実験。左が0.1Mリン酸緩衝
   液、右が精製酵素を滴下したペーパーディスク。
   いずれもエマルジョンが分解された部分にクリアゾーンの形成が見られる。
   


    ©2005 筑波大学生物学類