つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4:
TJB200501200100770
植物由来生理活性物質の微生物による代謝
武井 謙典 (筑波大学 生物学類 4年) 指導教員:
小林 達彦 (筑波大学 生命環境科学研究科)
【背景・目的】
近年の健康志向の高まりとともに、様々な生理活性物質が注目を集めてきている。特に、植物には多種多様な構造を有する生理活性物質が多数存在し、そのような物質には抗菌作用、抗酸化作用、抗ガン作用、血中コレステロール濃度抑制作用など、疾病予防・治療への効果が認められていることから、機能性食品や医療品等に広く利用されてきている。しかし、これらの物質の明確な作用機序はもとより、それらの代謝・分解機構も未だ明らかにされていない。
そこで、本研究では、植物由来の生理活性物質の代謝を担っている微生物を広く自然界よりスクリーニングし、生理活性物質の代謝に関わる酵素・遺伝子および代謝経路・代謝産物を解明することを目的とした。
【方法・結果】
1. 生理活性物質代謝菌のスクリーニング
生理活性物質を単一炭素源とした集積培養を行うことにより、各所の土壌等より目的微生物を約50株分離した。次に、生理活性物質を基質とした休止菌体反応を行い、反応後の残存基質量をHPLCで測定し、代謝活性の高い株を数株選抜した。
2. 生理活性物質代謝菌の諸性質の解析
活性の高かった株の微生物種を同定するために、生化学的試験及び16S rDNAの解析を行い、微生物種を同定した。
3. 生理活性物質代謝酵素遺伝子の解析
選抜菌株の遺伝子を無作為に破壊し、生理活性物質の代謝活性が低下もしくはなくなった変異株を分離選択した。分離選択した株中の破壊された遺伝子の幾つかについて同定を行い、塩基配列を決定した。
4. 中間産物の分取
選抜した株の中で、著量の中間産物の蓄積が確認された株を用いて、生理活性物質を代謝させ、代謝中間体を大量に分取した。現在、質量分析装置およびNMR等を用いて物質の同定を行いつつある。
【今後の予定】
3で同定した遺伝子を元株のゲノムよりクローニングし、変異株に対して相補実験を行い、その遺伝子が生理活性物質代謝経路に関与しているかを明確にする。
さらに、一連の中間産物を決定していくことで、生理活性物質の代謝経路の全貌を解明する。
©2005 筑波大学生物学類
|