つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4 TJB2005G110901

水 圏 生 態 学     Aquatic Ecology

科目番号: G11 0901
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 木曜日 1時限
担当教員: 濱 健夫


第1学期(担当教員: 濱 健夫)

授業概要: 
 海洋・湖沼・河川などの水圏に生息する生物群は、その物質代謝を通して、有機物を生産、変換、分解、輸送している。本授業では、地球表層の約7割を占める海洋を対象として、海洋における物質循環について理解を深めるとともに、生息する生物群集の物質代謝および物質循環における役割を中心に話を進める。また、近年危惧される地球温暖化と関連し、地球表層の炭素循環に対する海洋の役割と水圏生物の関わりについてもふれる。
 本授業は1、2学期連続した授業であり、1学期は海洋物質循環の概要とその基礎をなす植物プランクトンの有機物生産過程について、2学期は生物間の食物連鎖を通した有機物の分解過程と海底への有機物の輸送過程について講義し、地球環境と海洋物質循環との関係についてまとめる。

授業内容:
(1)生物の物質代謝と物質循環 −生物の生命活動は生態系における物質・エネルギーの動きにどう関わるのか−
(2)海を満たす水 −地球上に存在する大量の液体の水はどのような性質を持ち、またそれは生命活動や地球環境に対してどのような意義を持つのか−
(3)深層流と物質循環 −全世界の海洋を片道2000年かけて旅する深層流は海洋の物質循環とどう関わっているのか−
(4) 有機物の生産過程(1)植物プランクトンの分布 −なぜ海洋の植物プランクトンは、氷の浮かぶ冷たい海に豊富に存在し、暖かい海には少ないのか−
(5)有機物の生産過程(2)光の透過と光合成 −海水中で急速に減衰する光はどのように有機物生産を制御しているのか−
(6)有機物の生産過程(3)水塊構造と栄養塩の分布 −なぜ海洋表面の水温と栄養塩の濃度とには関係があるのか−
(7)有機物の生産過程(4)栄養塩吸収と優占種 −水中の窒素やリンの栄養塩濃度が異なると、なぜ優占する植物プランクトンの種類が変わるのか−
(8)有機物の生産過程(5)新生産と再生生産 −海洋における物質循環には、長いサーキットと短いサーキットがある−
(9)有機物の生産過程(6)植物プランクトンの増殖 −なぜ植物プランクトンの増殖速度は、海の砂漠でも高く維持されているのか−
(10)

前提科目・履修上の注意事項:
生態学概論、生化学概論I・II、植物分類学概論等の履修を前提とする。

単位取得条件、成績評価基準: 学期末に論述試験を行う。

指定教科書: なし。プリントによる。

参考書・文献:
1)水と生命の生態学(日高敏隆編)講談社
2)生物海洋学入門(関 監訳)講談社サイエンティフィク
3)生物海洋学(高橋・古谷・石丸 監訳)東海大学出版会

オフィス・アワー: 月・水・金曜日の午前。生物農林学系棟B617(Tel.7261)
メールによる問い合わせも歓迎(thama@boil.tsukuba.ac.jp)

備考(受講学生に望むこと):


第2学期(担当教員: 濱 健夫)

授業概要:



授業内容:
(1)食物連鎖と有機物の分解(1)捕食連鎖と微生物連鎖 −海洋の食物連鎖では、なぜ細菌類が重要な鍵になっているのか−
(2)食物連鎖と有機物の分解(2)溶存態有機物の役割と謎 −溶けた有機物は海洋物質循環にどのようにかかわっているのか そして謎が解け始めた−
(3)食物連鎖と有機物の分解(3)安定同位体比 −黙って測ればぴたりと当たる? 安定同位体比によりなぜ生物の食物や栄養段階が分かるのか−
(4)有機物の鉛直輸送(1)海に降る糞の雨 −海洋表層から海底方向に有機物を輸送する物体は海に降る動物プランクトンの糞の雨だった−
(5)有機物の鉛直輸送(2)沈降粒子の有機物 −有機物の組成から、なぜ粒子の速い沈降を証明できるのか−
(6)地球温暖化と海洋生物(1)温暖化のメカニズム −大気中の二酸化炭素の増加は、どうして地球温暖化を招くのか−
(7)地球温暖化と海洋生物(2)大気−陸上−海洋の炭素循環 −大気を含む地球表層の炭素循環に、海洋生態系はどう関わっているのか−
(8)空−陸−海(1)森と海のつながり −海の漁場を守るために、漁師はなぜ山に木を植えるのか そして海も森を支えている?
(9)空―陸―海(2)空と海のつながり −酸性雨が海に降ると、地球温暖化にブレーキがかかる?−
(10)

前提科目・履修上の注意事項:
生態学概論、生化学概論I・II、植物分類学概論等の履修を前提とする。

単位取得条件、成績評価基準:学期末に論述試験を行う。

指定教科書:なし。プリントによる。

参考書・文献:1学期に同じ。

オフィス・アワー:月・水・金曜日の午前。生物農林学系棟B617(Tel.7261)
メールによる問い合わせも歓迎(thama@boil.tsukuba.ac.jp)

備考(受講学生に望むこと):


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