つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB2005G210701

動 物 制 御 学     Chemical Regulation of Animals

科目番号:G21 0701
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 金曜日 1時限
担当教員: 戒能 洋一


第1学期(担当教員: 戒能 洋一)

授業概要:
 3億年前に出現し、現存する動物の70%以上を占める昆虫の種類は少なくとも200万種以上と言われている。彼らは陸上、水中を問わず地球上の全ての場所を生活の場としている。このように昆虫が圧倒的な繁栄を成し遂げたのは、彼らの体の構造、生理・生態的な機能が様々な環境下で生存できるように適応し、巧みに制御されるようになったからである。一方、一部の昆虫は私たちの衣食住に必要な生産物への被害、伝染病の媒介、環境保全などの点で深い関わりがあるので、彼らの個体密度を適度に制御しなければならない。この制御を効率よく行うには、昆虫自身の持つ生体制御メカニズムを十分に理解することが必要である。この講義では昆虫を主題として取り上げ、1学期には昆虫の消化から排泄、血液循環と呼吸、神経と興奮伝達、食物選択と栄養、変態・脱皮の内分泌制御、休眠、生殖器官と配偶行動、様々な感覚と行動、信号化学物質などの昆虫に特異的なメカニズムを解説する。

授業内容:
(1)昆虫と人間の関わり   序論
(2)昆虫の構造と生理 (1)消化系と排泄系
(3)    〃       (2)循環系と気管系
(4)    〃       (3)神経系と興奮伝達
(5)    〃       (4)食性と栄養
(6)    〃       (5)変態とホルモン
(7)    〃       (6)休眠と環境適応
(8)    〃       (7)生殖系と配偶行動
(9)    〃       (8)感覚と行動
(10)   〃       (9)信号化学物質

前提科目・履修上の注意事項:

単位取得条件、成績評価基準: 出席状況を参考に期末試験にて評価する。

指定教科書:

参考書・文献:
1)新応用昆虫学(斉藤・松本・平嶋・久野・中島 著)朝倉書店
2)応用昆虫学入門(松本・松田・正野・腰原 著)川島書店
3)昆虫機能利用学(鈴木幸一ら 著)朝倉書店
4)昆虫生理・生化学(池庄司・山下・桜井・山元・正野 著)朝倉書店
5)昆虫生物学(小原嘉明 編)朝倉書店

オフィス・アワー:
月〜金曜日13:00〜14:00; 生物農林学系棟C-706 (TEL4692)
e-mail: parasite@sakura.cc.tsukuba.ac.jp(事前に連絡すること)

備考(受講学生に望むこと): 参考書のうち1)または2)を通読することが望ましい。


第2学期(担当教員: 戒能 洋一)

授業概要:
 人間はその出現の時から生活を営む上でいろいろな昆虫に悩まされ続けてきた。それらの中で最も大きなものは、農業生産物の被害と昆虫が媒介する伝染病である。今日まで、これらの有害昆虫を制御するためにいろいろな技術が開発されてきたが、一部の方法は想像以上に人体や地球環境に悪影響を及ぼす結果となった。しかし、世界人口の増大に対応する食料の確保と昆虫が媒介する熱帯風土病の撲滅には今後も昆虫の制御が不可決である。2学期の講義では、国内外での生物生産現場における害虫制御と疾病媒介昆虫制御の方法や事例を解説し、続いて1学期で述べた昆虫の持ついろいろな生理生態機能をどのように操作すれば、目的の有害昆虫の発生を人為的に制御できるかを講義する。

授業内容:
(1) 害虫防除の歴史
(2) 昆虫制御の方法
(3) 化学的防除の種類と作用機構
(4) 殺虫剤の選択毒性と抵抗性の発達
(5) 殺虫剤の食品中への残留と生態系への影響
(6) 栽培管理、環境調節による害虫管理
(7) 化学生態学と昆虫制御
(8) 天敵利用による害虫管理
(9) 遺伝学的防除
(10)昆虫機能利用と害虫管理

前提科目・履修上の注意事項:

単位取得条件、成績評価基準: 出席状況を参考に期末試験にて評価する。

指定教科書:

参考書・文献:
1学期の参考書に加え、
1)総合的害虫管理学(中筋房夫著)養賢堂
2)応用昆虫学の基礎(中筋房夫ら 著)朝倉書店
3)害虫はなぜ農薬に強くなるか(浜 弘司著)農文協
4)天敵利用と害虫管理(根本 久著)農文協

オフィス・アワー:
月〜金曜日13:00〜14:00; 生物農林学系棟C-706(TEL4692)
e-mail: parasite@sakura.cc.tsukuba.ac.jp(事前に連絡すること)

備考(受講学生に望むこと): 参考書のうち、1)及び2)を通読することが望ましい。


©2005 筑波大学生物学類