つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4: TJB2005G211111

生 物 物 理 学 I    Biophysics I

科目番号: G21 1111  
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 月曜日 1時限
担当教員: 中谷  敬


第1学期(担当教員: 中谷  敬)

授業概要: 
 生物は外界からの様々な情報(例えば光,音など)を受け取ると同時に,生体内部においても様々な情報のネットワーク(例えば神経,ホルモンなど)のはたらきによって生命を維持している。細胞レベルでは,これらの情報(シグナル)はレセプターと呼ばれる蛋白質によって受容され,細胞内情報処理を経てさらに次のレベルに伝えられる。この過程で重要な役割を担うのがイオン・チャネルと呼ばれる蛋白質である.細胞の内外には細胞膜を介してイオンの濃度差が存在し,Na+,Ca2+,Cl-などは細胞外の方が濃度が高く,K+は細胞内で濃度が高い。イオン・チャネルはこれらのイオンの膜透過を制御することで情報の伝達,変換を行なっている。最近,パッチ・クランプ法の発明(1991年ノーベル賞受賞)によって様々なチャネルの生理学的なメカニズムが明らかにされ,また分子生物学の進歩によってその構造が明らかにされるなど,この分野の研究は急速に発展した。講義では,情報伝達において最も重要な役割を担うレセプターやイオン・チャネルを中心に,それら蛋白質の生理的,分子的機構を解説する。

授業内容:
(1)イントロダクション(細胞膜の構造と性質)
(2)膜を介する分子移動と電流の発生
(3)静止膜電位発生のメカニズム
(4)イオン・チャネルの分類
(5)電気信号の記録法(パッチ・クランプ法,他)と膜電流
(6)イオン・チャネルにおけるgatingのメカニズム
(7)単一チャネルのキネティクス
(8)活動電位発生のメカニズム
(9)電位依存性Na+チャネル
(10)Ca2+チャネル・K+チャネル

前提科目・履習上の注意事項:
高校の基礎程度の物理学および生物学を理解していること。

単位取得条件,成績評価基準: 各学期末に論述形式の試験を行う。

指定教科書: なし。 (ハンドアウトを配布します。)

参考書・文献:
1)イオンチャネルとレセプター (御子柴克彦 他 編, 「実験医学」増刊, 1992年, 羊土社)
2)Cellular Biophysics. (Thomas F. Weiss, 1996, Bradford Books)
3)The Physiology of Excitable Cells, 4th edition. (David Aidley, 1998, Cambridge University Press)
4)Molecular Biology of the Cell, 3rd edition. (Bruce Albert et al, 1994, Garland Publishing, Inc.)(日本語版あり)

オフィス・アワー:
月曜日16時〜18時; 生物農林学系棟F603 (Tel. 53-6672)
E-mail:   nakatani@biol.tsukuba.ac.jp
Web Site: http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~nakatani/

備考(受講学生に望むこと):


第2学期(担当教員: 中谷  敬)

授業概要:
 1学期に解説したレセプターおよびイオン・チャネルの電気的現象は,それらの蛋白質の分子構造やその立体構造と密接な関連がある。そこでそれらの蛋白質の分子構造と機能の関係を解説する。また信号(シグナル)の受容から電気的信号への変換すなわちシグナル・トランスダクションのメカニズムなど,細胞内における情報処理のメカニズムに話しを進める。さらに細胞内の環境を維持するために重要なはたらきをする,イオン・ポンプや分子トランスポーターについても解説する。

授業内容:
(1) 各種イオン・チャネル(イオン・チャネルの多様性)
(2) レセプターおよびチャネル蛋白質の分子構造
(3) 電位依存性チャネルにおける電位センサーの分子メカニズム
(4) イオン選択性とそのメカニズム
(5) 細胞間コミュニケーション I (電気シナプス)
(6) 細胞間コミュニケーション U (化学シナプス)
(7) Ca2+チャネルとニューロ・トランスミッターの開口放出
(8) シグナル・トランスダクション I (チャネル一体型レセプター,他)
(9) シグナル・トランスダクション U (2次メッセンジャーを介するシグナル伝達)
(10) 脳の高次機能(記憶・学習)とイオン・チャネル

前提科目・履習上の注意事項:
高校の基礎程度の物理学および生物学を理解していること。

単位取得条件,成績評価基準: 各学期末に論述形式の試験を行う。

指定教科書: なし。 (ハンドアウトを配布します。)

参考書:
1)イオンチャネルとレセプター (御子柴克彦 他 編, 「実験医学」増刊, 1992年, 羊土社)
2)Cellular Biophysics. (Thomas F. Weiss, 1996, Bradford Books)
3)The Physiology of Excitable Cells, 4th edition. (David Aidley, 1998, Cambridge University Press)
4)Molecular Biology of the Cell, 3rd edition. (Bruce Albert et al, 1994, Garland Publishing, Inc.)(日本語版あり)

オフィス・アワー: 
月曜日16時〜18時; 生物農林学系棟F603 (Tel. 53-6672)
E-mail: nakatani@biol.tsukuba.ac.jp
Web Site:http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~nakatani/

備考(受講学生に望むこと):


©2005 筑波大学生物学類