つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2005) 4 TJB2005G300801

植 物 生 理 学 I     Plant Physiology I

科目番号: G30 0801  
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 金曜日 1時限
担当教員: 酒井 愼吾、佐藤  忍


第1学期(担当教員: 酒井 愼吾、佐藤  忍)

授業概要:
 高等植物では、受粉による胚の形成と種子の休眠、発芽と栄養生長、生殖生長と老化・枯死により一個体の生活環が完了する。この植物の生活環は、それぞれの植物に固有の遺伝的プログラムに従って進められるが、その体制上の特徴のため、光、温度、水分、無機栄養などの環境要因と密接な関係を有する。また、高等植物の体は、多くの組織・器官から成り立つので、その発生や生理機能は、個々の細胞のみならず、細胞間、組織間、器官間の相互作用に依るところが大きい。本学期では、高等植物の生活環における様々な発生現象や生理現象(成長、休眠、種子形成、発芽、頂芽優性、不定器官形成、老化、花成など)のメカニズムと環境要因との関わりに関して、おもに個体?細胞レベルの観点から、これまで得られている分子的知見を加えながら概説する。

授業内容:
(1) 高等植物の発生とホルモンの特徴 
(2) 細胞接着と細胞伸長 
(3) 細胞分裂と微小管 
(4) 極性と屈曲 
(5) 環境要因と植物の関わり
(6) 芽の休眠と萌芽
(7) 種子の休眠と発芽
(8) 植物の体液系と物質輸送
(9) 器官の発生と根の働き
(10) 性表現と花成誘導 

前提科目・履修上の注意事項: なし

単位取得条件、成績評価基準:
学期末に記述式の試験を行い、出席状況や授業における取り組み等も考慮して、A−Dの4段階評価をする。

指定教科書:なし

参考書・文献: 
1)植物生理学 網野・駒嶺監訳 シュプリンガー
2)植物細胞壁と多糖類 桜井直樹・山本良一・加藤陽治共著 培風館
3)植物の成長と分化(上、下) 古谷雅樹監訳 学会出版センター
4)植物の休眠と発芽(UP Biology) 藤伊正著 東京大学出版会

オフィス・アワー:
月〜金曜日 11時から13時まで; 場所 総合研究棟A409; Te1(853)4672;
e-mail:satohshi@sakura.cc.tsukuba.ac.jp(佐藤;電子メールであらかじめ連絡してください)

備考(受講学生に望むこと):積極的に質問をし、受講後は参考書等で内容をさらに深めてもらいたい。


第2学期(担当教員: 酒井 愼吾、佐藤  忍)

授業概要:
 種子の発芽、分化、栄養成長、生殖成長、老化に至る植物の生活環のすべての過程は、基本的には遺伝子による遺伝的な制御によって生じるが、この生活環のすべての過程は植物ホルモンによって影響を受ける。これまでに、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレンの5種類が植物ホルモンとして認められているが、最近、ブラシノライドが6番目の植物ホルモンとして検討されている。また、物質としては単離されてはいないが、高等植物の開花ホルモンの存在も推定されている。植物ホルモンの生理作用は非常に多種多様であるが、これらの多くは核酸・タンパク質合成を伴って引き起こされる。最近の遺伝子レベルでの研究の進展により、植物ホルモンによる遺伝子発現の調節がようやく明らかにされつつあり、近い将来、植物ホルモンの作用機構を分子レベルで説明できるのではないかと期待されている。2学期では、植物ホルモンの作用機構を中心に講義し、植物ホルモンによる遺伝子発現の調節と、それに関与していると考えられている、植物ホルモンの受容体に関する最近の研究についても解説する。

授業内容: 
(1)植物ホルモンの特徴、環境要因と植物ホルモン 
(2)植物の生活環における植物ホルモンの相互作用 
(3)オーキシンの作用機構 
(4)オーキシンによる遺伝子発現の調節、オーキシン受容体に関する研究 
(5)ジベレリンの作用機構 
(6)ジベレリンによる遺伝子発現の調節、ジベレリン受容体に関する研究 
(7)サイトカイニンの作用機構、遺伝子発現の調節、受容体に関する研究 
(8)アブシジン酸の作用機構、遺伝子発現の調節、受容体に関する研究 
(9)エチレンの作用機構、遺伝子発現の調節、受容体に関する研究 
(10)ブラシノライド、他の生理活性物質の作用

前提科目・履修上の注意事項: なし

単位取得条件、成績評価基準:
学期末に記述式の試験を行い、出席状況や授業における取り組み等も考慮して、A-Dの4段階評価をする。

指定教科書:なし

参考書・文献: 
1)現代植物生理学3「生長と分化」 柴岡弘郎編 朝倉書店 
2)植物生理学 増田芳雄著 培風館 
3)植物のホルモン 勝見允行著 裳華房

オフィス・アワー: 
月〜金曜日 11時から13時まで;場所 総合研究棟A419; Tel(853)4871

備考(受講学生に望むこと): 受講後参考書で復習し、内容を深めて欲しい。


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