つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200601200200770

目的配列を複数有する二本鎖DNAの新規構築方法の開発

 
野々山 聡(筑波大学 生物学類 4年)  指導教員:小林 達彦(筑波大学 生命環境科学研究科)

背景と目的  
 今日にまで至る生物学の目覚しい発展とともに核酸の複製、増幅様式には様々なものが存在することが明らかとなっている。その中には一般的な二本鎖DNAからの複製反応やプラスミド、ウイルスゲノムの複製反応、逆転写酵素を用いたmRNAからのDNAの合成反応などが含まれる。最近、その中でも環状一本鎖DNA(cssDNA)を鋳型としてその相補鎖をタンデムに配列した鎖状一本鎖DNA(ssDNA)を迅速かつ正確に合成するRCA(Rolling Circle Amplification)と呼ばれる反応が注目されている。この特異的複製方法が可能となっているのは、この反応を触媒するDNA Polymeraseが鎖置換活性、高いプロセッシビティ及び高校正能といった他のDNA Polymeraseにはあまり見られない機能を同時に有していることによると考えられている。現在このRCA反応は、一塩基変異多型検出やシークエンス反応用鋳型DNAの簡便な増幅法などのバイオツールとして利用されつつある。最近当研究室において枯草菌ファージ由来DNA Polymeraseもこの活性を有し、RCA反応に利用可能であることが発見されている。  
 そこで本研究において、このRCA反応がもつ特異的産物を利用、応用することで「目的の配列を複数有するような二本鎖DNA」の新規構築方法を開発することを試みた。 

方法・結果  
 今回の実験で繰り返される目的配列1ユニットとして、約800bpのDNA断片を候補とした。この断片部分に修飾を加えつつPCRで増幅した後に、環状化、RCA反応を行い取得したrepeat ssDNAを用いて相補鎖合成などの種々の反応を行った。反応産物をアガロースゲル電気泳動を用いて分離、解析した。 
 その結果、電気泳動後ゲルから抽出できるレベルにおいて目的断片1ユニットが1つから7つまで繰り返された二本鎖DNAが合成されていることを確認することができた。 

結論と今後の予定
 RCA反応を利用した一連の反応を用いることによって、目的配列を複数有する二本鎖DNAが合成可能であることを確認することができた。現在、この構築法の精度を上げ、さらに簡便なものにすること、および合成された産物を様々な応用面に展開していくことを検討している。


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