つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200601200200790
生物が群れを形成する至近要因 -シミュレ-ションによる解析
森藤 倫子 (筑波大学 生物学類 4年) 指導教員:大橋 一晴 (筑波大学 生命環境科学研究科)
Hamilton(1971)の考えた群れというのは、群れの外側にいると、より食われやすい危険が高いため、より安全な他の個体の間に入るというものである。
だが恐らく、群れを形成した各個体は、はるかに単純な動機で行動しているだろう。それが群れの様に見えているのではないか。
たとえば'さみしさ'で、個体は動くとする。 'さみしさ'を感じて近づく。逆に'さみしさ'を感じないので遠ざかる。
新しい個体が産まれる時にはまた別に、群れを形成できる動機が入る。 親からどの程度離れた所に子を産むか?
それを仮に'子離れ'と呼ぶ。全ての個体は、この'子離れ'に従った場所に産まれ落ち、 'さみしさ'で移動する。
そのままではこの二つの値は多様なままだ。
そこに捕食という淘汰をくわえてやる。ランダムに捕食する場合、密集している個体を捕食する場合、離れている個体を狙う場合の3つである。
もし'さみしさ'と'子離れ'の変化を見た場合、それぞれの捕食条件ではどうなるのだろう。 ランダムに捕食する時、残る個体の
'さみしさ'と'子離れ'はランダムである。 密集している個体を選んだとしたら
'さみしさ'は低く、'子離れ'も進むだろう。逆に離れている個体を狙ったならば残るのはとても'さみしさ'を感じて、
'子離れ'できていない個体であろう。グラフにすると、0、1に集まると予想できる。
だが実際にシミュレーションを行なうと、実はその平均値は0、1にまで到らない。また描かれる線は直線にもならず、曲線である。
'さみしさ'と'子離れ'に捕食を加えたのみで、複雑な値の変化が起きることが分かった。そしてその値の変化は当然、全体の群れる群れないをも左右している。
もしここで登場する捕食者にもある、どんな個体を狙うかといった動機があったとしたならば、これらの値はいったいどんな動態を示すだろうか。
また現実にある似た現象では同じ様な動機があるのだろうか。これからこの様な点を考えていくつもりである。
©2006 筑波大学生物学類
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