つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200601200201965

アミノ酸新規変換経路の探索

金 流星(キムユソン)(筑波大学 生物学類 4年)  指導教員: 小林 達彦(筑波大学 生命環境科学研究科)

【背景】アミノ酸は人体の約20%を構成するタンパク質をつくる基本要素であり、全ての生物はこのアミノ酸を用い遺伝子産物であるタンパク質を作っている。そして20種の基本アミノ酸以外のアミノ酸異性体も植物ではよく見つかっており、ほ乳類においてはペプチド性ホルモンに使われている。また、アミノ酸及びその誘導体はサプリメントとして注目されている有用物質でもあり、これらの多くは微生物を利用した発酵法でつくられている。
【目的】本研究では、新規のアミノ酸変換産物及び新たな変換経路を探索し、解析することを目的とする。
【方法・結果】アミノ酸を単一炭素源・窒素源とする培地で生育できる微生物を土壌からスクリーニングした。単離した微生物を培養し、菌体を集菌、リン酸緩衝液で洗浄した。アミノ酸を基質として休止菌体反応を行い、反応溶液を高速液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフで分析した。その結果、基質アミノ酸の減少に伴い増加し、一般的なアミノ酸代謝産物とは異なる未知ピークを数種発見した。現在、この未知ピークを示す変換産物を種々の方法により同定中である。
【考察】これらのピークの中には新しいアミノ酸誘導体や、全く新規な物質があると予想できる。そしてこれらの物質が同定された場合には、その物質への変換経路及びその変換活性を有する新規酵素とそれをコードする遺伝子の発見が期待できる。


©2006 筑波大学生物学類