つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200606FN.

特集:筑波大学植物発生生理学研究室の歩み

私にとっての植物発生生理学研究室

中西  史 (東京学芸大学 生命科学分野)

 「あれ、中西さんどうしたの?今日から藤伊研はスキーでしょ。一緒に行ったんじゃないの?」

 大学3年生の春休み、藤伊 正 先生と約束した研究初日の(はずだった)朝、緊張しつつもやる気満々で2D320に足を踏み入れた私を、大野 豊 先輩のさわやかな声が迎えてくれました。しょっぱなから研究生活の厳しさを教えられ、引きこもりの数日を経た後、長い長い私の2D320生活が始まりました。

 同じ研究分野ながら植物に対する姿勢が全く異なる先生方、強烈な個性を持った先輩方、気のおけない同級生、心優しい後輩達に恵まれ、植物発生生理学研究室では研究面だけでなく、人生のあらゆる面で鍛錬を積ませていただきました。「真実は小説より奇なり」を地でゆくような波瀾万丈の研究室生活でしたが、今振り返っても不思議なほど「研究する」ということに対する疑問を持たず、体力が続く限り研究室にいるのが当たり前、という感覚で過ごしていました。なかなか成果は上がらず、怪我や体調不良で先生方をはじめいろいろな方にご心配、ご迷惑をおかけしましたが、筑波大学植物発生生理学研究室での貴重な経験は、今の私の精神的な拠り所となっています。

 現在私は、東京学芸大学で研究室を持ち、学部や修士の学生とともに開花運動のメカニズムや二次代謝系の酵素の研究を行う傍ら、非理科の大学生や小学校の先生や子ども達に「生き物のおもしろさ」についての話をしています。

 研究の面では一人で手が回らないことが多いのですが、筑波大学植物発生生理学研究室の皆さんにいろいろアドバイスをいただきながら何とかやりくりしています。堀 秀隆 先生、関本 弘之 先生、作田 千代子 博士、小田 篤 博士、朝比奈 雅志 博士には東京学芸大学に足を運んでいただき、講演やディスカッションを通じて研究室内外の学生の学問や研究に対するモティベーションを高めていただきました。また、様々な機会に植物発生生理学研究室の方々と旧交を深め、活躍の様子を知ることは私自身の大きな励みとなっております。不思議なことですが、研究室の所属時期が重なっていない方でも、同じ研究室のメンバーと言うだけで私にとっては兄弟姉妹のように近しく懐かしく感じられ、「なかなか進まなかった研究がうまくいった!」等と聞くと、涙が出るほど嬉しくなります。今更ながらではありますが、私に第二の家族を与えて下さった原田 宏 先生、藤伊 正 先生、また、現在も妹弟子や弟弟子を増やして下さっている鎌田 博 先生、酒井 慎吾 先生、佐藤 忍 先生には深く感謝いたしております。

 研究室の方々には助けていただくばかりで心苦しいのですが、今後とも末永くおつきあいお願いいたします。何かお役に立てることがありましたら、お気軽に声をおかけ下さい。

 皆様のご健康とご活躍を心より祈念いたしております。

(1996年生物科学研究科修了)

Communicated by Shinobu Satoh, Received June 12, 2006.

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