つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200606SS1.

特集:筑波大学植物発生生理学研究室の歩み

研究室バイブル

佐藤  忍 (筑波大学 生命環境科学研究科、生物学類長)

 植物発生生理学研究室がスタートして10年近くが経過し、学生の数が増えてくると、それまでの少人数で何でも分かり合える関係が崩れ、様々な問題が生じるようになりました。そこでその様な問題に対処するため、研究室のメンバー全員が協力して作成したのがこの「研究室バイブル」です。他の研究室に差し上げたりもしましたが、現在でも研究室の新人ガイダンスでは前文をコピーして配布しています。原田先生の書かれた緒言など、その精神は今でも厳然と生きています。皆さんの参考になると思い、ここに掲載させていただきます(VI〜VIIIは項目のみ)。



研究室バイブル

筑波大学 生物科学系 植物発生生理学研究室

1984年4月1日

I,緒言

 この小冊子は植物発生生理学研究室に所属する者(卒研生、院生、研究生、受託研究員、留学生等)が能率良く、かつ安全に十分な研究成果をあげるために必要な心構え、注意事項および実験機器、設備等の使用法や管理の原則等をまとめたものである。

 本研究室員はこのバイブルに述べられていることについて熟知するのみならず、必ず実行することが要求される。それは研究室全員の利益と安全を守ることに他ならないからである。

 本研究室においては研究に情熱を持たぬ者、あるいは精神的未成年者はその存在を許されない。特に本研究室創設時の理念に基づいて、一人一人が共存共栄体制の推進を念頭に置き、努力する事が強く望まれる。研究室にあって協調を乱す者、あるいは排他的行動をとる者の存在は許されない。換言すれば、各自、研究者の一員として、自覚と責任が要求される。何となれば、それを基盤として、協調性に富み、明るく、活性の高い研究室を築き上げることが全員の希望に他ならないからである。

 自然科学を学ぶ者として一堂に会した我々は、常に論議し、教え合い、学び合って研究室の繁栄のため、ひいては自然科学の発展のために努力することが義務であることを心に銘記しなければならない。

II,留意すべき一般的事項

1.事故を起こさぬよう細心の注意のもとに実験を行うこと。ガス、電気、水道等の配管、配線および機器の異常に気づいた場合には直ちに適切な処置をとり、安全係に連絡すること。

2.夜間の一人居残り実験は極力避けること。(特に女性はこの事に留意すること)

3.休日以外の日に休む時は、前もって誰かにその旨伝言し、所在を明らかにしておくこと。

4.機器の使用法や研究室の慣行について不明な時には、必ずそれらにつき熟知している者に尋ねること。

5.各責任者に余計な負担をかけないように留意すること。

6.限られた研究費を有効に使用するように工夫、努力すること。

7.常に整理、整頓、清潔に留意すること。研究、勉学に必要ないものは持ち込まないこと。

8.有機溶剤、試薬、細菌等の危険物を使用する際には、全室員の安全のために、その取扱いに十分注意すること。

9.卒研生、院生、研究生は登録後直ちに「学生教育・研究災害傷害保険」に加入すること。

10.教官の同意や認印、暑名等を要する場合には、十分な時間的余裕を持って申し出ること。期限ぎりぎりの申し出は認められない。

III,入退室時の注意事項等

1.入室時
 1)登校した旨の挨拶を行う。

2.退室時
 1)実験台上を整理・整頓し、清潔にしておく。実験継続中の場合はその旨メモなどを残し、実験者不在中の安全を確認し、他の人の迷惑とならないように配慮をしてから退室する。
 2)下校の旨の挨拶を行う。
 3)最後に退室するものは、特に次の事項についても確認する。
・ガス:元栓まで締める。
・水道:全ての蛇口を点検する。
・電気関係(乾熱器、ポット等)でONのまま放置しては危険なもの全てをOFFにする。
・消灯する。
・全てのドアの鍵をかける。

3.休憩時
 1)実験室内においては、原則として飲食・喫煙を禁止する。お茶室において使用した茶碗等は、各自すみやかに片付け、常にお茶台を清潔に保つこと。

IV,外部との研究上の交流について

 技術の習得または共同研究のために他大学や他省庁または民間の研究室等に出かける者、また外部の研究者を本研究室に招いて実験を行う者は、必ず事前(なるべく早く)に指導教官まで連絡すること。さもないと、相手によっては非常に失礼にあたる場合もあるので、十分に注意すること。自分勝手な行動がしばしば研究室全体の信用を落とす結果にもなり、後輩に多大の迷惑をかけることになることを意識していなければならない。

V,就職について

 常に指導教官と最大限密接な連絡をとること。特に最初のうちは複数の就職先と話を進めなければならないこともあるので、その過程では指導教官と意志の疎通に万全を尽くすことが絶対条件である。相手に失礼にならない時点で目標を一つに絞り、その就職先について一度自分がAcceptする意志表示をしたら、指導教官の合意がない限り絶対に勝手に就職先の鞍替えをしないこと。さもないと、研究室全体の信用を失墜し、後輩に多大の迷惑をかける結果ともなる。このことを心に銘記する必要がある。

VI,特別室の使用(項目のみ)

 P-1ルーム、絶対生理暗室(D307)、実験温室、バイオトロン、学類実験室(写真暗室2D414、低温室2D412、培養室2D317)

VII,備品(項目のみ)
 インキュベーター、エッペンドルフ用卓上遠心機、エバポレーター、遠心機、オートクレーブ、化学はかり、乾燥器、乾熱滅菌器、クリーンベンチ、クロマトチェンバー、顕微鏡、コイトトロン、高速液体クロマトグラフィー、シェーカー、蒸留水製造装置、真空ポンプ、水流ポンプ、SLAB GEL DRYER、超遠心分離器、DISH WASHER、電気泳動用電源、ニッコートロン、フォトメーター、フラクションコレクター、PHメーター、ユビコード、冷却遠心分離器、冷蔵庫・フリーザー

VIII,その他(項目のみ)

 ピペットマン、ピペットおよびピペット洗浄機、試薬、器具の洗浄、廃液、コピー

(教授、生物学類長、1985年生物科学研究科修了)

Contributed by Shinobu Satoh, Received June 12, 2006.

©2006 筑波大学生物学類