つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200606SSK.

特集:筑波大学植物発生生理学研究室の歩み

生命環境科学研究科・生命共存科学専攻の設立と
植物環境適応学分野のはじまり

酒井 愼吾 (筑波大学 生命環境科学研究科)

 藤伊先生が御退官後、佐藤先生と2人で2D320で研究を続けておりましたが、平成10年(1998)4月1日から生物科学研究科長の役職がまわってきました。大学院研究科はその前年から、大研究科にむけての改組の動きがあり、さっそくその荒波に乗り出すことになりました。当初は、理系5研究科(数学、物理、化学、地球、生物)が、筑波大学の中でまず大研究科として改組するという方向で討議されてきました。しかし、平成11年(1999)に入ったころから、大学執行部の意向として、理・工・農学関連博士課程8研究科の改組・再編を筑波大学として概算要求するという方向に変わってきました。生物科学研究科はどこと一緒になって改組するのかが、大問題になりました。しかし最終的には、執行部の意向もあり、生物科学研究科は地球科学研究科と農学研究科と一緒になって生命環境科学研究科という大研究科をつくることになりました。

 これまでのいきさつから、新研究科設立準備のまとめ役をすることになり、連日のように会議を行い、どのような内容の生命環境科学研究科にするか議論してきました。その中で、大研究科を作るからには教員の純増を要求して、3研究科の学際領域をカバーする新専攻を作ろうということになりました。新専攻を作るために、教授、助教授、講師各1人からなる研究分野を農学研究科は3、地球科学研究科は1、生物科学研究科も1に相当する教官定員を拠出し、新分野の教授、助教授、講師各1人の純増を要求することになりました。どのような新専攻を作るかで合意ができず、農学研究科は1分野の定員しか出さないということになりました。生物科学研究科では、新専攻に積極的に移行してくださる1分野の先生方が決まっていましたし、地球科学研究科も同じでした。

 それぞれの研究科が関係する教員定員数からして、生物も地球も、これ以上の定員を拠出することができません。しかし、専攻を作るには、少なくとも4分野の教員が必要です。新研究科設立に向けての作業もかなり進んでいたのですが、その目玉となる新専攻設置と教員の純増要求が破たんしてしまったわけです。そこで、地球科学研究科長の斉藤先生と相談し、不足する1分野を作るために、立場上、私が新専攻に出るように努力するから、地球科学の方から植物に関係する研究を行っている講師の先生を出してもらえないかと要請し、形の上だけでも1分野を作ることができました。これで概算要求ができる形がようやく整ったのです。生物科学研究科の先生方は、それぞれの希望により、構造生物科学専攻と情報生物科学専攻に移行することになっていました。計画がかなり具体的になった時点で、佐藤先生にこれまでの経緯を説明したところ、佐藤先生も新専攻に移っても良いという返事をいただきました。

 8研究科を3大研究科に改組・再編するという筑波大学の方針が、平成12年度概算要求事項としてまとまり、文部省での数度のヒアリングを受けました。このなかで、新専攻の研究分野は既存の専攻の研究分野と同一では、新専攻を作る意味がないということで、新専攻は生命共存科学専攻、私と佐藤さんの分野は、聞き慣れない「植物環境適応学」としました。最終的にはこの概算要求が認められ、生命共存科学専攻は大学院教育・研究に特化した独立専攻になり、教授、助教授、講師各1人の純増による新分野もできました。

 平成12年4月14日に新専攻の入学試験があり、植物環境適応学分野にも新しい院生が入ってきました。当初は2D320で研究を行っていたのですが、新しい総合研究棟Aができ、平成15年3月に新しい研究室に移転しました。

 その後、植物環境適応学分野では、平成15年12月に岩井さんが講師に採用され、平成16年4月には佐藤さんが教授に昇任され、ますます研究室は充実してきました。

 (教授、前生命共存科学専攻長)

Contributed by Shingo Sakai, Received June 12, 2006.

©2006 筑波大学生物学類