つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2006) 5: TJB200606YH.
特集:筑波大学植物発生生理学研究室の歩み
これから研究室に入る皆さんへ樋口 洋平 (筑波大学生命環境科学研究科博士課程)
私が最初に鎌田先生の研究室を訪れてから、早いものでもう5年が経ちました。今は学位取得に向けて必死になっている最中です。これを読むのは学類生の方が多いと思いますので、ここでは私が学類生時代に考えていた事や、研究室を選ぶきっかけなどについて簡単に紹介させて頂きます。こんな人もいるんだなあと、皆さんの参考に少しでもなれば幸いです。 大学に入った当初は漠然と「研究がやりたい」と考えていましたが、これといって何がやりたいというわけでもありませんでした。そんな中、一年生の時に受講した植物生理学概論で、鎌田先生の講義を聞くことになりました。その時の印象は鮮烈で、「なんと楽しそうに植物生理を語る先生なんだ!」と思ったことを今でも覚えています。その他大勢の先生方の講義も、もちろん新鮮で魅力的だったのですが、鎌田先生の講義に特別な印象を受けたことは間違いありません。 その後二年生、三年生と勤勉な学生生活を過ごす予定でしたが、そうもいきませんでした。入学当初に感じた新鮮さと輝きは失せ、講義はただ単位を取得するためだけのものとなり、バイトとサークル活動にのめり込んでいったのです(よくあるパターンですね…。先生方ごめんなさい)。この当時、本当に自分がやりたい事は何か?今ある考えは他人から押し付けられたものではないのか?という疑念に捕われ、一度全ての常識を破壊する必要がある、などというわけのわからない理屈から、履修放棄を繰り返していました(決して真似しないでください)。明らかにパンクロックとメタルの聴き過ぎだったと思います。 そんな中、三年生の冬に転機が訪れます。卒研の研究室を決めることになり、鎌田先生に一回話を聞きに行っただけで決めてしまいました。ここでもまた先生の話術にやられてしまったのです。その当時「鎌田研は厳しいよ」とかいう噂があったのですが、どうせやるなら厳しい方がいいかなとも思いました。なぜ植物生理にしたのかという事に関して明確な理由は思い出せないのですが、先生に惹かれたのと、実家が米とタバコの専業農家をやっていたことが大きく影響していたと思います。農家を継ぐのが嫌で大学に出てきたのに、結局は植物が大好きだったというわけで…。 さて、卒研を始めてからの生活は劇的に変化しました。自分のテーマを設定して、それに向かって毎日どれだけ仕事をしてもいいという環境が、とても素晴らしいものに感じました。僕のやりたかった事はこれだ!と思いました。それまでの半ひきこもり生活とは決別し、毎日研究室に来るのが楽しくてしょうがない状況になったのです。人生の中で、一生続けていきたいと思うものが初めて見つかった瞬間でした(まだ一人前になれる保証はありませんが…)。 そんなこんなで現在に至るわけですが、研究内容の方も少し紹介させて頂きたいと思います。鎌田研の中では、高等植物の胚発生、光周性花成、概日リズム、環境影響評価などさまざまな研究を行っています。私は中でも、小野先生の指導の下でアサガオを使った光周性花成の研究を行っています。光周性花成というのは、植物が季節によって変化する昼と夜の長さを認識して開花時期を決定する現象の事を言います。この日長の認識には、明暗刺激の受容と内生の概日リズムの二つの要素が不可欠だと考えられています。アサガオは非常に鋭敏な光周性反応を示す事から、古典生理学におけるモデル植物として盛んに研究が行われてきました。最近になって、小野先生らによって高効率な形質転換系が開発され、分子遺伝学的な解析が可能となったことから、目覚ましい勢いで研究が進んでいます。これからの数年で、シロイヌナズナやイネでわかっていない新しいメカニズムが次々と明らかにされることでしょう。はっきり言って、今アサガオが熱いです。興味のある方、ぜひ来てください。 さて、ここまで色々書いてきましたが、これから研究室を選ぶ学類生の皆さんの参考に少しでもなれたのか、不安でなりません。そこで最後に、研究室の一日とはどんな雰囲気なのか、簡単に紹介して終わりにしたいと思います。 〜鎌田研のある一日〜 AM9:00 AM10: 30 AM12:00〜PM1:00 PM1: 30〜 PM6:00〜 PM9:00〜 PM11:00〜 翌AM1:00 土日・祝祭日 Communicated by Shinobu Satoh, Received June 12, 2006.
©2006 筑波大学生物学類
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