つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB200701200310753

放線菌の誘導発現機構に関する研究

金井 一実 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教員:小林 達彦 (筑波大学 生命環境科学研究科)

<背景、目的>
 当研究室では、ニトリル(R-CN)やイソニトリル(R-NC)といった含窒素化合物の代謝に関わる微生物由来酵素の機能解析および本酵素による有用物質生産検討を行ってきた。含窒素化合物の微生物代謝に関しては、未知なる代謝も多く存在すると推測されることから、さらに新たな知見を得る目的で含窒素化合物の微生物代謝に関する研究も行っている。放線菌での含窒素化合物の代謝をみるために、様々な化合物(ここでは特に、炭素-窒素結合を有する化合物を対象とした)を培地に添加して生育を観察することで、既に当研究室で、ある炭素-窒素結合を有する化合物Xの添加によりタンパク質Yの発現が増加する現象が認められている。また、このタンパク質Yを同定し、タンパク質Yをコードしている遺伝子の単離にも既に成功し、この遺伝子上流領域にはプロモーターと予想される配列が存在することが判明している。本研究では、化合物Xの添加によりタンパク質Yが誘導発現する調節機構を解明することを目的とする。

< 方法、結果>
 プロモーターと予想される領域を含む断片の下流にレポーター遺伝子を連結して放線菌に導入し、いろいろな条件で菌体を培養する。得られた菌体から無細胞抽出液を調製し、レポータータンパク質を指標とした活性測定を行うことで、本断片にプロモーター領域が含まれるかどうか確認を行う。プロモーター活性が認められた場合には、本領域のディリーション断片を作成し同様にレポータータンパク質を指標としてプロモーター活性を測定することで、最少領域を決定する。さらに、化合物Xの添加によりレポータータンパク質の発現が誘導されるかどうか確認し、本プロモーターが誘導型であるかどうか調べる。

<今後の予定>
 放線菌は抗生物質など様々な有用物質を生産する菌であり、応用上極めて重要な微生物である。そのため、これらの有用物質を効率よく安全に生産する大量発現系が求められている。本研究で解析するプロモーターが誘導型である場合には、本系を利用した誘導型発現系の構築が期待できる。


©2007 筑波大学生物学類