つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB200701200310770

微生物によるイソニトリル代謝に関する研究

佐藤 太祐 (筑波大学 生物学類 4年)  指導教員:小林 達彦 (筑波大学 生命環境科学研究科)

背景・目的

 当研究室では、近年、イソニトリル(R-N≡C)の代謝に関わる研究を行っている。イソニトリルは、イソシアノ基(-N≡C)を有する毒性化合物であり、最初の発見は化学合成の副産物として生まれたものであった。一方、天然物も発見され、自然界において、カイメンやカビ、細菌などの生物によって生合成されていることが明らかとなっている。しかしながら、これらのイソニトリルはどのようにして生合成、生分解されるかについて未だ解明されておらず、特に分子レベルでの解析は全く行われていなかった。イソニトリルの前駆体についての報告が数例あるものの、各種前駆体がどのようにイソシアノ基に変換されるのか、また、生じたイソニトリルがどのように分解されていくのかは、タンパク質・遺伝子レベルも含め全く解明されていなかった。そこで、当研究室において微生物によるイソニトリル分解研究が開始され、本化合物の代謝に関わる酵素群が単離された。まず、N19-2株から、イソニトリルを水和してN-置換ホルムアミドに変換する酵素・イソニトリルヒドラターゼが発見され、次いでF164株から、N-置換ホルムアミドを加水分解してアミンとギ酸へとさらに変換するN-置換ホルムアミドデホルミラーゼが発見された。それぞれ酵素学的諸性質や遺伝子構造も既に明らかとなっている。また、F164株は両酵素活性を示すことが分かっているが、本株の有するイソニトリルヒドラターゼの詳細については未だ解明されていない。
 そこで本研究では、F164株の有するイソニトリルヒドラターゼおよびその遺伝子を単離し、その諸性質を明らかにすることを目的とした。

方法・結果

 まず、F164株から得られた無細胞抽出液を用いて、イソニトリルヒドラターゼの活性測定法を構築した。次に、本株において最大の本酵素発現量を得るために、種々の培養条件の検討を行い、至適条件を決定した。現在、無細胞抽出液を調製した後、カラムクロマトグラフィー操作を行い、本酵素の精製条件を検討しているところである。


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