つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB200701200312256

微生物の新規変換経路の探索

キム ヨンチョル (筑波大学 生物学類 4年)  指導教員:小林 達彦 (筑波大学 生命環境科学研究科)

背景と目的
 全ての生物はこのアミノ酸を用い遺伝子産物であるタンパク質を作っている。そのためアミノ酸は人体の約20%を構成するタンパク質をつくる基本要素となっている。そして植物では20種の基本アミノ酸以外のアミノ酸異性体もよく見つかっており、ほ乳類においてはペプチド性ホルモンに使われている。また、アミノ酸及びその誘導体はサプリメントとして注目されている有用物質でもあり、これらの多くは微生物を利用した発酵法でつくられている。本研究では、新規のアミノ酸変換産物及び新たな変換経路を探索し、解析することを目的とする。

方法と結果
 アミノ酸を単一炭素源・窒素源とする培地で生育できる微生物を研究室保有菌株からスクリーニングした。生育した微生物を培養し、菌体を集菌、リン酸緩衝液で洗浄した。アミノ酸を基質として休止菌体反応を行い、反応溶液をガスクロマトグラフで分析した。その結果、休止菌体反応時間に依存して増加するピークが出現した。このピークは、一般的なアミノ酸代謝産物とは異なる特殊時間に現れた。現在、この未知ピークを示す変換産物を種々の方法により同定中である。

考察
 ピークを示す化合物は新しいアミノ酸誘導体や、全く新規な化合物と予想できる。そしてこれらの化合物が同定された場合には、その物質への変換経路及びその変換活性を有する新規酵素の発見が期待できる。


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