つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2007) 6: TJB2007G110111

植 物 系 統 分 類 学 I     Plant Taxonomy I

科目番号: G11 0111
単位数: 2単位
標準履修年次: 2・3年
実施学期 曜時限: 第1・2学期 金曜日 2時限
担当教員: 井上  勲


第1学期(担当教員: 井上  勲)

授業概要:
 植物は酸素発生型光合成を行う生物の総称で,通常,動物と対比して論議される。しかし,光合成生物は原核生物と真核生物にまたがり,さらに真核光合成生物は起源を異にする生物の集合であることが明らかになっている。このような複数の起源をもつ光合成生物の世界をどのように体系づけることができるか,そして,どのような論理と技術でその体系化が可能になるかを学ぶ。1学期は原核の光合成生物と,緑色植物を除く植物群を、2学期は緑色植物を対象とする。理解を助ける目的で,写真やビデオなどの資料が用意されている。

授業内容:
(1)分類学の方法論:原始形質と派生形質。形態形質,化学形質,分子形質の独立性と相互補完の関係。細胞構造と光化学系の形質評価。
(2)真核生物の構成:クラウン生物群。オピストコントとバイコント。酸素発生型光合成生物の複数起源,およびそれらが生物界で占める位置。
(3)原核光合成生物(光合成細菌とシアノバクテリア,原核緑藻)の分類,生物学。
(4) 葉緑体の共生と光合成生物の成立。狭義の植物:灰色植物,紅色植物,緑色植物。
(5) クリプト植物とクロララクニオン植物:光合成真核生物の多様化をもたらした真核共生のしくみ。ヌクレオモルフの発見,その構造と分子生物学的特徴。
(6)アルベオラータ生物群(繊毛虫,アピコンプレクサ類,渦鞭毛藻類)。渦鞭毛植物の形態,分類,生態的特徴。
(7)ストラメノパイル生物群。黄色植物,鞭毛菌,原生動物にまたがる真核生物の巨大系統群の構成と系統,分類。クロミスタとクロムアルベオラータ。
(8)黄色植物(1):黄金色藻綱(形態,鞭毛装置と食作用,分解者としての役割),黄緑色藻綱,ラフィド藻綱,真眼点藻綱,珪藻綱.ディクティオカ藻綱,ペラゴ藻綱の特徴と性質。
(9)黄色植物(2):褐藻綱の体制,生活環の多様性,分類系。
(10)ハプト植物円石藻の石灰化と微化石,地球環境。キネトプラスト類とユーグレナ植物。
(11)期末試験

前提科目・履修上の注意事項:

単位取得条件、成績評価基準: 期末に行う論述試験による。

指定教科書:

参考書・文献:
1) 藻類30億年の自然史 藻類から見る生物進化 井上 勲,東海大学出版会,2006.
2)バイオディバーシティー・シリーズ1 生物の種多様性 裳華房,1996.
3)同2. 植物の多様性と系統 1998,3,藻類の多様性と系統 裳華房,1999.
4)Algae. L. E. Graham and L. W. Wilcox, Prentice Hall, 2000.
5)Algae, An Introduction to Phycology. Van den Hoek, C. et al., Cambridge University Press, 1995.
6)植物と菌の系統と進化.西田 誠 編,放送大学教材,1987.
7)植物と菌の系統と分類.岩槻邦男 編,日本放送出版協会,1995.
8)生と死の自然史-進化を統べる酸素 西田睦監訳・遠藤圭子訳 東海大学出版会,2006.

オフィスアワー:
総合研究棟A1階、研究科長室または生物農林学系棟B504,常時(ただし、電話またはe-mailによる事前連絡をお願いします)。
(内線7297または6655, e-mail:iinouye@sakura.cc.tsukuba.ac.jp)

備考(受講学生に望むこと): 
講義はきっかけを与えるものです。知識や考え方を本当に身につけるためには、自ら積極的に勉強することが不可欠です。毎日の自習を勧めます。


第2学期(担当教員: 井上  勲)

授業概要:
 植物は酸素発生型光合成を行う生物の総称で,通常,動物と対比して論議される。しかし,光合成生物は原核生物と真核生物にまたがり,さらに真核光合成生物は起源を異にする生物の集合であることが明らかになっている。このような複数の起源をもつ光合成生物の世界をどのように体系づけることができるか,そして,どのような論理と技術でその体系化が可能になるかを学ぶ。1学期は原核の光合成生物と,緑色植物を除く植物群を、2学期は緑色植物を対象とする。理解を助ける目的で,写真やビデオなどの資料が用意されている。

授業内容:
(1)緑色植物の構成とそれらが生物界で占める位置。
(2)緑色植物の系統解析に必要な形質:鞭毛装置,細胞分裂,生理,生化学的性質
(3)プラシノ藻綱とアオサ藻綱。細胞構造,光合成色素,生活環の多様性,分類。
(4)緑藻綱。
(5)シャジクモ藻綱。
(6)陸上植物の進化段階と系統。化石,生活環,分子データ。
(7)コケ植物(蘚類,苔類,ツノゴケ類):特徴と分類系,系統。
(8)シダ植物(マッバラン類,ヒカゲノカズラ類,トクサ類,シダ類):特徴と分類系,系統。
(9)種子植物:形質の進化。裸子植物(ソテツ類,球果類,グネツム類)の特徴と分類。
(10)被子植物:分類と系統,花の進化,分子系統。
(11)期末試験

前提科目・履修上の注意事項:
植物系統分類学I(1学期)を履修していること。

単位取得条件、成績評価基準:
期末に行う論述試験による。

指定教科書:

参考書・文献:
1)絵で分かる植物の世界 大場秀章監修、清水晶子著、講談社, 2006.
2)植物自然史 戸部 博、朝倉書店, 1994.
3)藻類30億年の自然史 藻類から見る生物進化 井上 勲,東海大学出版会,2006.
4)バイオディバーシティー・シリーズ1 生物の種多様性 裳華房,1996.
5)同2. 植物の多様性と系統 裳華房,1998,
6)同3. 藻類の多様性と系統 裳華房,1999.
7)Algae. L. E. Graham and L. W. Wilcox, Prentice Hall, 2000.
8)Algae, An Introduction to phycology. Van den Hoek, C. et al., Cambridge University Press, 1995.
9)植物と菌の系統と進化.西田 誠 編,放送大学教材,1987.
10)植物と菌の系統と分類.岩槻邦男 編,日本放送出版協会,1995.

オフィスアワー:
生命環境科学研究科長室(総合研究棟A1階)または生物農林学系棟B504,常時(ただし、電話またはe-mailによる事前連絡をお願いします)。
(内線7297または6655,e-mail:iinouye@sakura.cc.tsukuba.ac.jp)

備考(受講学生に望むこと):
講義はきっかけを与えるものです。知識や考え方を本当に身につけるためには、自ら積極的に勉強することが不可欠です。毎日の自習を勧めます。


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