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植物は高温多湿な熱帯地域から低温の寒帯、水分の少ない乾燥地、光の強い草原や暗い森の中、さらには淡水や海水の中まで実にさまざまな環境 (environment) に生育しており、その環境条件に基づいてさまざまに類別することができる。
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光条件
植物はその好む光条件、特に弱い光でも生育できるか否か (耐陰性) によって以下のように分けられる。
- 陽生植物 (sun plant, heliophyte, intolerant plant)
- 耐陰性が低く、明るい場所 (陽地) に生育する植物。光合成量・呼吸量とも大きく、光補償点・光飽和点が高い。一般に葉は層状に配置され、葉の柵状組織がよく発達して厚い。ススキ (イネ科)、ナズナ (アブラナ科)、スミレ類 (スミレ科)、タンポポ類 (キク科) などの陽生草本とアカマツ (マツ科)、クリ (ブナ科)、シラカバ、ハンオキ類 (カバノキ科)、ヤナギ類 (ヤナギ科) などの陽樹 (sun tree, intolerant tree) がある。またイネ、ムギ (イネ科)、ダイズ (マメ科) などほとんどの作物植物や、チュ−リップ (ユリ科)、パンジー (スミレ科)、サクラ類 (バラ科)、ツツジ類 (ツツジ科)、アサガオ (ヒルガオ科) など花卉植物なども陽生植物である。一般に植生遷移の過程では、最初に陽生草本が優占し、途中相では陽樹が優占する。
- 陰生植物 (shade plant, shade tolerant plant)
- 耐陰性が強く、暗い場所 (陰地) に生育する植物。光合成量・呼吸量とも小さく、光補償点・光飽和点が低い。一般に葉は一平面状に配置され、葉の柵状組織の発達は悪く薄い。条件による耐陰性の違いによって以下のように分けられる。
- 絶対陰性植物 (obligate shade plant, sciophyte)
- 一生を通じて強光下では生育が妨げられる陰生植物。シュンラン (ラン科)、ミズヒキ (タデ科)、イノコズチ (ヒユ科) などの陰生草本とヒイラギナンテン (メギ科)、ユキツバキ (ツバキ科)、アオキ (ミズキ科)、ヤツデ (ウコギ科) などの陰樹 (shade tree) がある。コケ類・シダ類の多くも含まれる。またコンニャク、サトイモ (サトイモ科) などの作物やアジサイ (アジサイ科) などの花卉植物も含まれる。一般に植生では森林の下草や低木層を形成するものが多い。
- 条件的陰性植物 (facultative shade plant)
- 幼期には陰生植物の性質が強いが、成長すると陽地でよく生育する植物。シラビソ (マツ科)、ブナ、シイ類 (ブナ科)、ヤブツバキ (ツバキ科) などがある。一般に植生遷移の過程では、極相において高木層を形成するものが多い。
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図1.
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水環境
植物は水中に生育するものから砂漠や極地など利用可能な水分が少ない環境に生育するものまでさまざまであり、その水分環境条件によって以下のように分けられる。
- 水生植物 (hydrophyte, aquatic plant, water plant)
- 少なくとも生活環のある時期に植物体の少なくとも一部が水中か水面にある植物。広義にはカワノリやシャジクモのような大型藻類、ミドリムシやボルボックスのような植物プランクトンも含む。
- 沈水植物 (submerged plant, immersed aquatic plant)
- 根は水底に固着し、茎や葉の全体が水面下にある植物。水中にある葉を沈水葉 (submerged leaf) という。マツモ (マツモ科)、エビモ (ヒルムシロ科)、クロモ、セキショウモ、コカナダモ (トチカガミ科)、バイカモ (キンポウゲ科) などがある。またアマモ (アマモ科) やウミヒルモ (トチカガミ科)、シオニラ (シオニラ科) などのように汽水や海水中に生える沈水植物は特に海草 (see grass) とよばれる (読み方は同じだが 海藻 seeweed は全く異なり、海中に生える大形の藻類のことである)。
- 浮葉植物 (floating leaved plant, floating leaf water plant)
- 根は水底に固着し、葉は水上には出ず、少なくとも一部が水面に浮かんでいる植物。水面に浮かぶ葉を浮水葉 (floating leaf) という。デンジソウ (ウラボシ綱)、ヒツジグサ、ジュンサイ (スイレン科)、ヒルムシロ (ヒルムシロ科)、トチカガミ (トチカガミ科)、ヒシ (ヒシ科)、アサザ (ミツガシワ科) などがある。
- 浮遊植物 (free-floating plant, floating plant)
- 浮水植物ともいう。根は水底に固着せず、植物体が水中や水面にある植物。水面に浮かぶ葉を浮水葉 (floating leaf) という。サンショウモ、アカウキクサ (ウラボシ綱)、ウキクサ (サトイモ科)、ホテイアオイ (ミズアオイ科)、ムジナモ (モウセンゴケ科)、タヌキモ (タヌキモ科) などがある。
- 挺水植物 (emergent plant, emerging plant)
- 根は水底に固着し、少なくとも植物体が葉の一部は水上に突き出ている植物。水面から突き出ている葉を抽水葉または挺水葉 (emergent leaf) という。コウホネ (スイレン科)、オモダカ (オモダカ科)、ガマ (ガマ科)、フトイ (カヤツリグサ科)、ヨシ (イネ科)、ハス (ハス科) などがある。また汽水域に生えるシオクグ (カヤツリグサ科) なども挺水植物である。
- 湿生植物 (hygrophyte)
- 川辺や湿原など水分が豊富な陸上に生える植物。トクサ (トクサ科)、アゼスゲ (カヤツリグサ科)、ヌマガヤ (イネ科)、ハンノキ (カバノキ科)、ミゾソバ (タデ科)、アカバナ (アカバナ科)、シロネ (シソ科)、ミゾカクシ (キキョウ科) などがある。またガマ (イネ科) など生育範囲が広いものでは、挺水植物であることもあるし湿生植物であることもある。
- 中生植物 (mesophyte)
- 湿生植物と乾生植物の中間的な環境、つまり湿地でも乾燥地でもないふつうの地上に生育する植物。熱帯から寒帯まで最もふつうに見られる植物。
- 乾生植物 (xerophyte)
- 砂漠や極地、海浜など利用可能な水分の少ない環境に生育する植物。発達したクチクラ層や気孔の陥没、貯水組織の発達などそのような環境に適応した形態のことを乾生形態 (xeromorphism) という。
- 塩生植物 (halophyte, halophilous plant)
- 海浜や海岸砂丘、塩地など塩分の多い土壌に生育する植物。細胞内の塩濃度が高いため、周囲の土壌から水分を吸収できる。一般に多肉質だが、葉は無毛で気孔の陥没も少ない。
- 湿塩生植物 (hydrohalophyte)
- 塩生植物のうち、塩湿地に生育する植物。アッケシソウ、ハママツナ (アカザ科)、オヒルギやメヒルギ (ヒルギ科) などがある。
- 乾塩性植物 (xerohalophyte)
- 塩生植物のうち、乾地に生育する植物。ハマアカザ、マツナ (アカザ科)、ホウキギク (キク科) などがある。
- 海浜植物 (littoral plant)
- 海浜や海岸の岩場に生育する植物。一般に葉のクチクラ層が厚く光沢があり、地下部がよく発達する。クロマツ (マツ科)、トベラ (トベラ科)、ハマダイコン (アブラナ科)、ハマボウフウ (セリ科)、ハマヒルガオ (ヒルガオ科)、ツワブキ (キク科) などがある。
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図1.
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土壌
土壌の発達は植物と大きく関係している。最初は岩石だった基質 (母岩、基岩 C層) が、風化して植物が生育し始めると植物遺体が堆積していく (A0層) 。植物が生育していくとその根によって母岩が細かく、深く砕かれ、A0層の下に有機物に富んだ黒い層 (A層) が形成される。さらにA層の下には有機物を含まない茶色の層 (B層) ができる。さらに植物が発達するにつれてA層、B層がさらに深くなり、土壌は成熟する。このような土壌の発達にともなって生育する植物種も変化していく。
- 成帯土壌 (zonal soil type)
- 植物遺体層 (A0層)、有機物の黒い層 (A層)、有機物を含まない黒い層 (B層)、母岩 (C層) がよく分化・発達している土壌。
- 漂白土壌 (ポドゾル土壌) (podozol)
- A層が溶け去って灰色を呈し、北海道北部に見られる。
- 灰褐色森林土壌 (free-floating plant, floating plant)
- 漂白土壌と褐色森林土壌の中間形で北海道から東北、北陸地方に見られる。
- 褐色森林土壌 (brown forest soil)
- 関東から中部地方に見られる。
- 赤色土壌 (red soil)
- 本州西部から四国・九州にみられる。
- 間帯土壌 (intrazonal soil type)
- 本来ならば成帯土壌となるはずの地域において、母岩や地下水の影響でできる特殊な土壌。
- テラロッサ (terra rossa)
- 石灰岩地帯に発達し、鉄やアルミナを含む赤色の土壌。
- 火山灰土壌 (recent volcanic soil)
- 新しい火山灰が堆積してできた土壌。
- 湿原土壌 (bog soil)
- 湿原にできる土壌。
- 無帯土壌 (azonal soil type)
- その地形による影響でA層とB層の分化が不明瞭な土壌。
- 山地土壌 (mountain soil)
- 山の急斜面にあって上方からの土砂が堆積してできた土壌。
- 沖積土壌 (alluvial soil)
- 河川が運んできた土砂が堆積してできた土壌。
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図1.
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母岩
日本では、土壌の母岩はほとんどが珪酸を含む酸性岩である。しかし一部には珪酸を含まない石灰岩や超塩基性岩 (蛇紋岩、カンラン岩など) など特殊岩石が母岩となっている場所もある。このような特殊岩石地帯にはそれぞれ特異的な植物が生育しているが。物理的要因、化学的要因、生物的要因など様々な要因が絡まってこのような分布が成り立っている。
- 石灰岩植物 (limestone plant)
- 石灰岩を母岩とする場所に多く生育する植物。
- 絶対的石灰岩植物 (exclusive limestone plant)
- 石灰岩地帯にのみ生育する植物。分布域が極めて限られるものや隔離分布するものが多い。前者にはチチブイワザクラ (サクラソウ科)、キバナコウリンカ (キク科) など、後者にはチチブミネバリ (カバノキ科)、イワツクバネウツギ (スイカズラ科) などがある。広域分布するものとしてはイチョウシダ (ウラボシ綱) が知られる。
- 条件的石灰岩植物 (selective limestone plant)
- おもに石灰岩地帯に生育するが、他にも見られるもの。しばしば下記の超塩基性岩地域にも生育する。イワウサギシダ、クモノスシダ (ウラボシ綱)、ミヤマビャクシン (ヒノキ科)、イワシデ (カバノキ科)、イワシモツケ (バラ科) などがある。
- 超塩基性岩植物 (ultrabasicolous plant)
- 蛇紋岩やかんらん岩など超塩基性岩を母岩とする場所に多く生育する植物。広義には蛇紋岩植物 (serpentine plant) ともよばれる。
- 絶対的超塩基性岩植物 (exclusive ultrabasicolous plant)
- 超塩基性岩地帯にのみ生育する植物。分布域が極めて限られるものや隔離分布するものが多い。前者にはヒダカソウ (キンポウゲ科)、トサミズキ (マンサク科)、ハヤチネウスユキソウ (キク科) など、後者にはカトウハコベ (ナデシコ科)、ナンブイヌナズナ (アブラナ科) などがある。
- 条件的超塩基性岩植物 (selective ultrabasicolous plant)
- おもに超塩基性岩地帯に生育するが、他にも見られるもの。しばしば上記の石灰岩地域にも生育する。前述のイワウサギシダ、イワシデ、イワシモツケとともにヒロハドウダンツツジ (ツツジ科) などがある。
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図1.
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土壌の性質
生育土壌の水素イオン濃度 (pH) は母岩の性質や立地条件によって変化し、植物の生育に大きな影響を与える。植物は生育可能な土壌のpHに基づいて以下のように分けることができる。
- 酸性植物 (好酸性植物 acid plant)
- pH7以下の酸性土壌に生育する植物。高層湿原の植物や前述の絶対的超塩基性岩植物は酸性植物でもある。ワラビ (ウラボシ綱)、ヤマユリ (ユリ科)、クリ (ブナ科)、ヤマウルシ (ウルシ科)、リョウブ (リョウブ科)、シャクナゲ類やツツジ類 (ツツジ科) など。
- 中性植物 (neutral plant)
- pH7前後の土壌に生育する植物。日本ではほとんどの土壌がわずかに酸性な程度であり、大部分の植物は中性植物である。
- 塩基性植物 (好塩基性植物、アルカリ植物 alkaline plant)
- pH7以上のアルカリ性土壌に生育する植物。塩生植物や前述の絶対性石灰岩植物は塩基性植物でもある。
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図1.
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