1-3. Tetraselmis cordiformis. 土浦港 (2006.10.30). Scale bar = 10 µm.
植物界 緑色植物亜界 緑藻植物門 プラシノ藻綱 (クロロデンドロン藻綱) クロロデンドロン目 クロロデンドロン科
テトラセルミス属
Tetraselmis F. Stein 1878, Organismus Infusion. 3: 143, pl. 16, figs. 1-3.
Type species: Tetraselmis cordiformis (Carter) Stein 1878
Synonyms: Prasinocladus Kuckuck 1894: 261; Chlorodendron Senn in Engler & Prantl 1900: 187; Platymonas G.S. West 1916: 3.

基本的に単細胞自由遊泳性。細胞は多少とも扁平で楕円形。 細胞前端が平らで中央が窪んでおり、その底から4本の等長鞭毛が生じている。細胞停止時には鞭毛は後方へ湾曲して細胞背腹に2本ずつ伸びる。細胞は薄い細胞壁(テカ、鱗片が融合して形成)に覆われる (図3)。鞭毛は2種類の小さな有機質鱗片(小方鱗片、棒状鱗片)で覆われ、毛状鱗片が2列に生えている (EM)。1個(まれに2個)のカップ型の葉緑体をもち、前方では葉片が4つに裂ける。葉緑体基部にはピレノイドが1個存在する (図1, 3)。ピレノイド基質には前方から細胞質基質が貫入する (EM)。ふつう大きな眼点が1個、細胞腹面に存在する (図2b)。淡水種では細胞前方に2個の収縮胞がある (図2a)。 不動細胞期がよく見られ、基質に付着している期間が長い種もある。ときに細胞分裂時の母細胞壁などから柄(ときに分枝)が形成され、その先端に不動性の細胞が位置する樹枝状群体を形成する (このような種は Prasinocladus に分類されることもある)。

不動細胞期に母細胞壁内で2個の娘細胞を形成して増殖する。ふつう母細胞壁内で、娘細胞の1個は反転して逆向きになる。またときに無性的に厚壁シストを形成し、4個の娘細胞を放出する。有性生殖は未知。

約30種が知られる。細胞の大きさ、形、葉緑体の形態などで分類されている。近年の微細構造学的調査からは、ピレノイドの構造や鞭毛上の毛状鱗片の形態が有効であることが示唆されている (Norris et al. 1980, Hori et al. 1982, 1983, 1986, Marin et al. 1993)。近縁属として Scherffelia があるが、この属はピレノイドを欠く。ただし Scherffelia を分けた場合、Tetraselmis はおそらく側系統群になってしまう。

多くは海水域に生育するが、汽水〜淡水種もいる。多くはプランクトン性だが、ベントスとして生活するものもある。また扁形動物に共生する種も知られている。タイプ種である T. cordiformis は、淡水止水域でふつうに見られ、ときに大増殖する。霞ヶ浦でもときにかなり多く見られる。

参考文献 References