1-2. Anthophysa vegetans. 土浦港 (2006.10.30). Scale bars = 10 µm.
ストラメノパイル 不等毛植物門 黄金色藻綱 オクロモナス目* オクロモナス科*
アントフィサ属(カビヒゲムシ属)
Anthophysa Bory de Saint-Vincent 1822, Dict. Class. Hist. Nat. 1: 427, 597. nom. cons.
Type species: Anthophysa mueller Borry 1822 nom. illeg. = Volvox vegetans O.F.Müller 1786 = Anthophysa vegetans (O.F.Müller 1786) Stein 1878
Synonym: Anthophysis Bory de Saint-Vincent 1822

柄の先端を中心に多数(〜60個)の自由遊泳性細胞が放射状に集まって球形〜亜球形の群体を形成する(菊花状群体)。柄は基部で基物に付着し、しばしば分枝する。ときに細胞の塊が柄からはずれて球形の群体として遊泳していることがある(そのため柄だけが見られることも多い)。柄は最初寒天質状で無色だが(上図)、リン酸カルシウムと鉄・マグネシウムの沈着によって褐色になることが多い。

細胞は長さ3〜10 µm。頂端付近から生じる長短2本の鞭毛をもち(長鞭毛は細胞長の1.5-2倍)、鞭毛打によって餌粒子を引き寄せて細胞亜頂端にある細胞口で取り込む。未消化物は細胞後方から排出される。細胞後端は細く尖り、先端で他の細胞とくっついている。この細胞後端の突起が細長く伸びて柄の中に伸長していることがある。葉緑体を欠くが、白色体(ロイコプラスト)をもち、その中に眼点が存在することがある。収縮胞をもち、クリソラミナラン胞が存在する。

細胞は2分裂によって増殖する。群体から1細胞または細胞塊がはずれて泳ぎ去ることによって群体数が増加する。ときに2核の細胞が形成され、スタト胞子になると思われる(胞子内で核融合?)。細胞融合により有性生殖は未知。

確実なものとしては、タイプ種である Anthophysa vegetans のみが知られる。18S rDNA塩基配列の系統解析からは Poterioochromonas spp. や Ochromonas sphaerocystis に近縁であることが示唆されているらしい(Bailey & Misner 2005)。

淡水止水域に広く分布し、特に富栄養・汚水域でふつうに見られる。おもにバクテリアを捕食する。

参考文献 References