[ストラメノパイル] [黄色植物] [褐藻綱] [黄緑色藻綱] [黄金色藻綱] [珪藻綱] [ラフィド藻綱] [真眼点藻綱] [ディクティオカ藻綱] [ペラゴ藻綱] [パルマ藻類] [葉緑体をもたないストラメノパイル] [卵菌類] [サカゲツボカビ類] [ラビリンチュラ類] [ビコソエカ類]


ストラメノパイル (STRAMENOPILES)


真核共生に由来する真核光合成生物のなかで,現在地球上で最も繁栄しているのはクロロフィルaとcをもつ黄色植物です。これは褐藻を頂点とする仲間で,陸上の緑色植物に対して,水中の主要な光合成生物として繁栄しています。褐藻類はオオウキモ (Macrocystis)が数十メートルにまで成長して海中林を形成し,さまざまな海産動物の産卵や生育の場を提供しています。日本の沿岸でいえば,北海道のコンブ類の林,本州各地のアラメやカジメのつくる林,さらにホンダワラ類の海中林や流れ藻が海洋の基礎生産(一次生産),水質の浄化,そして魚介類の生活の場として重要な役割を果たしています。海中林は陸上の森林にも匹敵するものです。

黄色植物にはこのほか,黄金色藻綱,黄緑色藻綱,真眼点藻綱,珪藻綱,ラフィド藻綱,ペラゴ藻綱,ディクティオカ藻綱,さらに分類上の位置が現在なお明らかでないパルマ藻など,綱の階級で分類される多様な仲間が含まれています。これらの分類群の大部分は単細胞の藻類です。

形態(微細構造形質)と分子形質の解析の二つの異なる形質の解析から,黄色植物が鞭毛菌類や,一部の原生動物とともに生物界の巨大な系統群を形成していることが,明らかになってきました。この生物群がストラメノパイルです。


ストラメノパイルを構成する生物群

ストラメノパイルは以下のような多様な生物群を含んでいます。これらは旧来の「植物」「菌類」「原生動物」にまたがっており,便宜上,藻類,菌類,原生動物要素とよんで整理してみました。

藻類要素

黄金色藻綱黄緑色藻綱真眼点藻綱珪藻綱ラフィド藻綱ペラゴ藻綱ディクティオカ藻綱パルマ藻

菌類要素

卵菌類サカゲツボカビ類ラビリンチュラ類

原生動物要素

ビコソエカ類,オパリナ類,太陽虫


ストラメノパイルの特徴

この分類群に所属する藻類,菌類,原生動物要素の生物はすべて管状マスチゴネマとよばれる小毛を鞭毛表面にもつ点で共通しています。マスチゴネマとはmastigos:鞭(鞭毛の意),nema:糸というギリシャ語からなる用語で,「鞭毛の毛」を意味しています。
多くの生物の遊走細胞は鞭毛表面に毛や鱗片などの修飾構造をもっており,鞭毛に毛をもつことは生物界でことさら特徴的なことではありません。しかし,ストラメノパイルの鞭毛の毛は思いもかけない働きをもっています。

管状マスチゴネマの構造とはたらき

ストラメノパイルの遊泳細胞は2本の鞭毛をもち,前方に伸びる1本が遊泳のための推進力を誘起しています。この鞭毛の表面には,管状マスチゴネマ(tubular mastigonemes)とよばれる毛状の構造があります。この「毛」は三つの下部構造(基部,軸部,先端毛)からなり,軸部は中空になっているのが特徴です。ストラメノパイルのすべての仲間はこの管状マスチゴネマをもっています。藻類の多くの仲間は鞭毛に毛状構造をもっていますが(たとえばプラシノ藻,ユーグレナ藻),管状マスチゴネマは褐藻類や黄金色藻類など黄色植物に分類される仲間にだけみられるものです。もう1本の鞭毛は後方または側方に伸び,毛状の構造などの表面構造はありません。

 

従来は鞭毛の小毛を,羽型,片羽型などのように,毛の分布に基づいて類型化していましたが(少し古い教科書では現在でもみられます!),実際には毛自体の性質が異なっていることが分かっています。管状マスチゴネマをもつ生物群では,鞭毛の生じる推進力の方向が異なっているのが最大の特徴です。

つまり,管状マスチゴネマが存在することによって,鞭毛本体が生じる推進力の方向が逆転しています。