林研究室の発表論文

Science, 320: 661-664.

ROS-Generating Mitochindrial DNA Mutations Can Regulate Tumor Cell Metasitasis
ミトコンドリアDNAの突然変異はがん細胞の転移能獲得に寄与する

論文著者
Ishikawa K, Takenaga, K, Akimoto M, Koshikawa N, Yamaguchi A, Imanishi H, Nakada K, Honma Y, Hayashi JI.


~概要~
ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー工場として知られる小器官で、食物から得た栄養分と呼吸で取り入れた酸素を用いて生命の維持に必要なエネルギーとなるATPを合成する役割を担っています。また、ミトコンドリアには細胞の核にある遺伝情報(核DNA)とは別に、ミトコンドリアDNA(以下、mtDNA)と呼ばれる独自のゲノムが存在しています。
今回、ミトコンドリア呼吸酵素複合体Ⅰの活性を低下させる病原性突然変異がmtDNAに生じることにより、ミトコンドリアのATP合成機能が低下し、それに伴って生じる活性酸素種(以下、ROS)の増加によって核DNAにコードされた幾つかの遺伝子の発現量が増加するという一連の過程を経て、最終的にがん細胞の転移能が可逆的に上昇することを、マウスのがん細胞を用いて明らかにしました。また、同様の現象がヒトの一部のがん細胞でも起こりうることもわかりました。

本研究成果の重要性は、以下の2点にまとめられます。
①mtDNAの突然変異が転移能に関わっていることを証明した。これは、mtDNAがATP合成以外の生命現象に関与することを示した初めての報告である。
②抗酸化剤の処理によって一度獲得した転移能が可逆的に抑制されることから、mtDNAの突然変異によって誘導される転移に対する有効な治療法の開発が可能であることを示した。

報道資料






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