ヌクレオモルフの機能とゲノムの縮小進化

二次共生によって葉緑体を獲得した藻類群のうち,クロララクニオン藻とクリプト藻の葉緑体には,起源となった真核藻の縮小した核(ヌクレオモルフ)が現在でも残っており,独自のゲノムを持っている。なぜこれら2つの藻類群ではヌクレオモルフが残っているのだろうか?

我々は,複数のクロララクニオン藻でヌクレオモルフのゲノムプロジェクトを行なっており、共生に伴う真核ゲノムの縮小進化を比較ゲノム科学から明らかにするとともに、ヌクレオモルフー核ー葉緑体の間での細胞機能の統合がどのように行なわれているかを,細胞生物学的,生化学的,分子進化学的なアプロ−チによって解明しています。

参考文献
・原慶明、恵良田真由美、石田健一郎(1992)ヌクレオモルフ。植物細胞工学14:373-382
・石田健一郎(1999)共生核の運命。バイオディバーシティ・シリーズ3 藻類の多様性と系統(千原光雄・編)裳華房 pp.258-259
上:クロララクニオン藻のヌクレオモルフ染色体の構造
3本の染色体の両端にリボソームRNA遺伝子オペロンとテロメアが存在する。

下:ヌクレオモルフの電子顕微鏡写真
葉緑体(ch)に附随する細胞質区画に二重膜に囲まれたヌクレオモルフ(nm)が存在する。その膜には核孔様のギャップ(矢印)が存在する。葉緑体の起源となった真核藻類の縮小した核であることがわかっている。