[はじめに][植物と藻類][酸素発生型光合成と藻類][五界説と藻類][細胞共生による真核生物の多様化][八界説と藻類][藻類の分類と系統][分類形質と分類系][真核生物の系統と藻類の占める位置][クラウン生物群][藻類を含む新たな真核生物群][ユーグレノゾア][ストラメノパイル][アルベオラータ]
八界説と藻類


ホイッタカーやマルグリスによって提唱され,現在最も広く受け入れられている5界説は,基本的に生活様式に基づいた認識であるために,生物界の系統を考えるとき多くの矛盾があります。

現在の系統分類学の成果を取り入れることで,その矛盾を解消し,さらに5界説の感覚的に理解しやすい点を残した分類系が Cavalier-Smith の8界説です。あいまいな部分を原生生物界に残しているという点で8界説も5界説と本質的に変わりません。しかし,8界説の真価は系統分類学の知識を取り入れ,生物の血のつながり(つまり系統)を前面に押し出している点にあります。そのためにこのシステムは,1981年に最初に提唱されて以来,新たな見解を加えて,ほぼ毎年何らかの改訂が加えられています。

原生動物界 (Protozoa) は5界説の原生生物界 (Protista) にあたるもので,現在の知識と理解の範囲では分類学的に処理できない部分といっていいでしょう。研究が進むことで原生生物界に分類されている仲間は他の生物群の中に組み入れられるか,あるいは新たな分類群として認識されて行くと思われます。5界説と同様に8界説は動物,植物,菌類界を認めていますが,ここではその系統的な位置づけは明確です。菌類はツボカビ,接合菌,子嚢菌,担子菌を含む仲間で動物の姉妹群として認識されます。これは分子系統学の知見に基づいています。また植物は最初に葉緑体を獲得した生物の系統で,緑色植物と紅藻を含む分類群として認識されます。

8界説は,細かい点では系統分類の成果と矛盾する多くの問題をかかえていますが,より自然な生物観を確立するための貴重な進展であるといえます。ちなみにMargulisも1993年にアーケゾアやクロミスタの存在を認める記事を残しています。